研究実績の概要 |
可搬型20成分調合嗅覚ディスプレイを前年度試作した。また、精油を20成分程度の要素臭を調合して再現できることも前年度までに示した。本年度は精油ライブラリを作成してホームページから精油の香りを再現する仕組みを作成した。 香りのクリエーションに関しては、複数の香り記述子を指定して該当する香りを生成する実験を行った。要素臭レシピからマススペクトルを作成し、深層学習で香り記述子データに写像する。その香り記述子セットが指定されたものと一致すれば、その時の要素臭レシピにより香りを作成する。一致しない場合はコスト関数を勾配法により減少させるように要素臭レシピを更新する。同様の手順を収束するまで繰り返し、該当する要素臭レシピを求めた。 そして、要素臭から実際に香りを作成した。2種類の精油についてオリジナルの香り記述子セットにFloralを追加した香りを作成し、オリジナルと比べてどちらがFloralの印象になっているかを被験者に尋ねた。また、別の精油2種類に関してSweetを追加し同様な実験を行った。その結果、前者に関してはFloral, 後者に関してSweetの印象が増加していることが確認できた。このように香りクリエーションが実際に可能なことがわかった。しかし、深層学習で香り記述子を予測する際に推定精度が不十分な場合は意図した通りの香りを生成するのが難しいという問題点も明らかになった。 自然言語処理に関しては,事前学習済み言語モデルに対し,匂いに関するドメインアダプテーションと単語レベルの対照学習を行うことで,匂い情報を獲得する手法TOLEを提案した.実験の結果,TOLEは匂いに関する記述子による匂いの埋め込み表現と言語の埋め込み表現の間の類似度を向上させることを確認した.さらに,TOLEが先行研究と比べ,記述子の情報からマススペクトルの情報を予測する性能も向上させることを確認した
|