研究課題/領域番号 |
21H04924
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀川 恵司 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40467858)
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研究分担者 |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10281065)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (30509724)
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 西南極氷床 / 鮮新世 / 温暖化 / 鉛同位体比 / 氷床融解 / 砕屑物の起源解析 |
研究実績の概要 |
現在よりも全球平均気温で2-3度温暖だった鮮新世温暖期において,南極氷床の融解の有無,融解していた場合の融解域の特定が,(古)気候科学・環境科学研究において重要な課題になってきている。本研究では,西南極アムンゼン湾で採取された海底堆積物試料(IODP Exp379)を対象にして,砕屑物の鉛同位体比分析から砕屑物の供給源解析を行った。供給源解析を行うにあたり,西南極基盤岩試料と西南極縁辺域の表層堆積物試料も対象として鉛同位体比の分析を行った。さらに,現在の西南極氷床の末端部は、外洋から比較的温暖なCircumpolar Deep Water (CDW)が流入することで急速に融解しているが,鮮新世における西南極氷床の融解にもCDWの流入が関与していたかを議論するため,海洋堆積物中の鉄マンガン水酸化物の鉛同位体比の分析・解析も行った。
昨年度およびこれまで継続してきた共同研究の成果として,IODP379次航海で採取されたアムンゼン湾沖試料で対象としていた9つの氷床崩壊イベント層のうち,6つのイベント層について,約120層準でFe-Mn水酸化物の鉛同位体比と砕屑物のPb同位体比分析を行った。さらに,オハイオ州立大学Polar Rock Repositoryから提供された南極基盤岩試料約100試料,共同研究者から提供された西南極縁辺域の表層堆積物,約30試料についても,砕屑物のPb同位体比分析を実施した。これら2021年度に得られたデータを元に,鮮新世温暖期における氷期ー間氷期スケールでの砕屑物起源の変動を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,アムンゼン沖海底堆積物試料の解析に加え,南極大陸の岩石試料の同位体比分析から,砕屑物の起源解析および融解域の特定をしようと考えていた。しかし,アムンゼン沖航海に一緒に乗船していた英国の研究者から,西南極縁辺域の表層堆積物試料を供与していただき,砕屑物の起源解析を高精度で行う上で重要になる基礎データの拡充がはかられた。2021年度には岩石試料,表層堆積物試料,アムンゼン沖試料について砕屑物のPb同位体比分析を終え,当初計画していた通りPb同位体比を用いることで砕屑物起源の特定・融解域の推定が可能であることが確認できた。一方で,アムンゼン湾東部とベリングハウゼンから供給される砕屑物のPb同位体比がやや類似した傾向を持つこともわかり,この2地域の寄与をより明確にするために,今後ネオジム同位体比による解析も加える必要があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
南極岩石試料のSr-Nd-Pb同位体比分析(およそ100試料), 南極縁辺域の表層堆積物試料のSr-Nd-Pb同位体比分析(およそ40試料), アムンゼン沖U1532コア試料のSr-Nd-Pb同位体比分析(6つの氷期ー間氷期)を進め,同時に,アムンゼン沖試料に見られる大規模融解イベントをウィルクスランド沖試料についても追跡し,融解イベントの連動性・地域性について解析する。 珪藻を比較的多く含む間氷期の堆積物を対象として,Zn/Si比の分析を行い,CDWの挙動解析の指標となるか検討する。
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