研究課題/領域番号 |
21H04927
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田代 聡 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (20243610)
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研究分担者 |
堀越 保則 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00719429)
粟井 和夫 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294573)
西淵 いくの 広島大学, 病院(医), 講師 (70595834)
孫 継英 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (80397926)
太田 邦史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90211789)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 放射線被ばく / ゲノムダメージ / 医療放射線 / バイオマーカー / ハイスループット解析技術 |
研究実績の概要 |
ハイスループットゲノムダメージ定量的解析法の確立では、PNA-FISH法を基盤とした染色体構造異常の新しい解析技術の開発に取り組んでいる。R5年度は、高速自動染色体解析システムの開発、効率的に個々の細胞での変異や再構成を検出する新しいゲノムダメージ評価法の確立に、本研究の研究分担者である東京大学太田邦史教授と引き続き取り組んだ。 新しいゲノムダメージバイオマーカーの開発では、放射線誘発核内ドメインの構造構築に関連する因子をプロテオミクスにより明らかにし、これらの因子について超解像顕微鏡や次世代シーケンサーを用いた解析により放射線誘発核内ドメイン内部の微細構造及び染色体DNAとの関連、染色体異常、DNA変異などを指標とした解析を行い、ゲノムダメージの新しいバイオマーカーとしての可能性を検討している。このような研究から、老化に関連することが知られているKlothoタンパク質が放射線による染色体DNA損傷の防護に関わっていることを明らかにし、論文発表した。 ゲノムダメージ解析技術を用いた医療放射線被ばくの人体影響評価では、広島大学病院を受診し放射線診断、治療を受けた症例などについて、末梢血リンパ球を用いたゲノムダメージの経時的変動を検討している。PET-CT検査などの放射線診断を受ける症例、肺がん、大腸癌などの放射線治療例、さらに比較的被ばく線量が高いとされている循環器内科医などの医療従事者についてゲノムダメージとその影響について定量的経時的解析を進め、論文作成に取り組んでいる。また、造影剤腎症に放射線によるDNA損傷誘導が造影剤により増強されることが動物実験などから明らかになり、論文発表を行なった。さらに、現在確立しているPNA-FISH法を用いた染色体解析とgH2AXフォーカス解析によるゲノムダメージの定量的経時的評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイスループットゲノムダメージ定量的解析法の確立では、PNA-FISH法を基盤とした染色体構造異常の新しい解析技術の開発に取り組んでいる。R5年度は、高速自動染色体解析システムの開発、効率的に個々の細胞での変異や再構成を検出する新しいゲノムダメージ評価法の確立に、本研究の研究分担者である東京大学太田邦史教授と引き続き取り組み、研究の方向性を確認することができた。 新しいゲノムダメージバイオマーカーの開発では、ゲノムダメージの新しいバイオマーカーとしての可能性を検討している。R5年度は、既存のゲノムダメージマーカーなどを指標とした解析を行い、老化に関連することが知られているKlothoタンパク質が放射線による染色体DNA損傷の防護に関わっていることを明らかにし、Klothoがゲノムダメージの新しいバイオマーカーになる可能性が示された。現在、Klothoの各ドメインの機能解析を進めている。 ゲノムダメージ解析技術を用いた医療放射線被ばくの人体影響評価では、広島大学病院を受診し放射線診断、治療を受けた症例などについて、末梢血リンパ球を用いたゲノムダメージの経時的変動を検討する。R5年度は、PET-CT検査などの放射線診断を受ける症例、肺がん、大腸癌などの放射線治療例、さらに比較的被ばく線量が高いとされている循環器内科医などの医療従事者についてゲノムダメージとその影響について定量的経時的解析を進めた。その結界、PET-CTによる被曝影響は、通常線量CTと低線量CTの間になることが明らかになり、論文作成中である。また、造影剤腎症に放射線によるDNA損傷誘導が造影剤により増強されることが動物実験などから明らかになり、論文発表を行なった。さらに、現在確立しているPNA-FISH法を用いた染色体解析とgH2AXフォーカス解析によるゲノムダメージの定量的経時的評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ハイスループットゲノムダメージ定量的解析法の確立では、PNA-FISH法を基盤とした染色体構造異常の新しい解析技術の開発に取り組むため、AIなどを用いた最新の画像解析技術の導入による高速自動染色体解析システムの開発をさらに進める。放射線誘発核内ドメインについても、現在より多数の検体についての解析に対応するため、これまでより高速かつ正確なgH2AXフォーカス、RAD51フォーカスのハイスループット解析技術の確立に取り組む。多数の細胞についても、引き続き特定のDNA領域の濃縮を行い、効率的に個々の細胞での変異や再構成を検出する新しいゲノムダメージ評価法の確立に、本研究の研究分担者である東京大学太田邦史教授と取り組む。 新しいゲノムダメージバイオマーカーの開発では、放射線誘発核内ドメインの構造構築に関連する因子をプロテオミクスにより明らかにし、これらの因子について超解像顕微鏡や次世代シーケンサーを用いた解析により放射線誘発核内ドメイン内部の微細構造及び染色体DNAとの関連、染色体異常、DNA変異などを指標とした解析を行い、ゲノムダメージの新しいバイオマーカーとしての可能性を検討する。Klothoについては、ゲノムダメージにどのように関わっているのか、そのメカニズムの解明にプロテオミクス解析などを用いて取り組む。 ゲノムダメージ解析技術を用いた医療放射線被ばくの人体影響評価では、広島大学病院を受診し肺がんの放射線治療を受けた症例などについて、末梢血リンパ球を用いたゲノムダメージの経時的変動を検討を継続する。PET-CTによる染色体異常、ゲノムダメージの誘導については、論文を投稿する。染色体やDNA、タンパク質解析などが可能な形で検体を保存し、前項で確立する新しいゲノムダメージマーカーの解析技術を用いて、さらに効率的で多角的なゲノムダメージとその影響の検討を行う。
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