研究課題/領域番号 |
21H04939
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 伸吾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90202043)
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研究分担者 |
笠井 亮秀 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (80263127)
萩原 聖士 東京大学, 大気海洋研究所, 特任講師 (80704501)
脇谷 量子郎 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (00816069)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | ウナギ属魚類 / 輸送分散 / 数値シミュレーション / 行動 / 地球環境変動 / 河川構造物 / 資源保全 / 環境DNA |
研究実績の概要 |
[輸送分散過程の数値シミュレーション解析] 主にEUのCopernicusが開発したデータ(GLOBAL OCEAN PHYSICS REANALYSIS)を使用して、オオウナギ北太平洋集団の産卵場(西マリアナ海嶺南部海域)からの仔魚輸送分散シミュレーションを実施した。その結果、北赤道海流によって西方に輸送された後、黒潮に取り込まれて北上するものとミンダナオ海流に取り込まれて南下する輸送経路を再現し、両者の割合には季節的・経年的変動があることを明らかにした。 [ニホンウナギとオオウナギを対象とした成魚の行動調査および人工構造物の影響評価] 養殖ニホンウナギの放流後の行動を調べるために、養殖ウナギ170個体を静岡県の深田川に放流した。携帯型RFIDシステムを用いて経時的追跡調査を実施したところ、上流移動が落差によって制限されることや、肥満度が低いほど下流移動確率が高まることが示された。また、静岡県の道龍川で採集したニホンウナギ49個体と奄美大島の大棚川で採集したオオウナギ106個体の水系内移送放流を行い、経時的追跡調査を実施した。その結果、10日後の元の生息地への回帰率はニホンウナギの場合には上流移送群が29.2%、下流移送群が16.0%、オオウナギの場合には上流移送群が3.7%、下流移送群が36.5%であり、種特異的な生息地固執性・選好性の存在が示唆された。 [環境DNA分析のための採水・濾過および解析] 日本産ウナギ属魚類4種を対象に、環境DNA検出/定量用の種特異的プライマー・プローブセットを設計した。房総半島、屋久島、奄美大島、石垣島、西表島の20河川、計51地点において採水を行い、試料を収集した。また、南西諸島海域で行った学術研究船「白鳳丸」による調査データの遺伝子解析を継続して実施し、その際に採集した仔稚魚の種同定結果との比較を行う準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輸送分散過程の数値シミュレーション解析は当初予定していた通り進行しており、とくに世界に様々なモデルがある中で、本研究に適したモデルを選択できたこと、およびオオウナギのシミュレーションが再現性高く行えたことは今後行う条件を多様に変えたシミュレーションを行う上で大きな成果といえる。また、テレメトリー実験やウナギ属魚類の採集、環境DNA用の採水なども順調に行え、今後の展開も支障なく進められると期待できる。1年目でありながら、学会発表を順調に行えていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
輸送分散過程の数値シミュレーション解析、ニホンウナギとオオウナギを対象とした成魚の採集、環境DNA分析のための採水・濾過、オオウナギの産卵水深推定のための飼育実験、ウナギ属魚類稚魚の来遊水深推定のための環境DNA分析、人工構造物の影響評価を実施する予定である。大部分は、昨年度から継続して実施する項目であり、研究計画の大幅な変更は予定していない。また、得られた成果は、学会の研究発表大会などで公表すると同時に、学術雑誌への掲載を目指し投稿する予定である。
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