研究課題/領域番号 |
21H04947
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 志乃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, グループリーダー (00272203)
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研究分担者 |
小西 輝昭 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, グループリーダー (70443067)
大澤 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (90324681)
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 研究員 (90825499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 骨 / ウラン / 分布 / 内部被ばく / 化学状態分析 / 局所線量 / マイクロCT |
研究実績の概要 |
骨は内部被ばく線量・リスク評価の重要器官である。現行の内部被ばく核種の骨移行評価はカルシウムの体内動態モデルを基盤としたシミュレーションが主体であり、ウランにおいては体内動態や生体内での化学的性質が著しく異なるにもかかわらず、ストロンチウム、ラジウム等のアルカリ土類金属と同じモデル計算で評価されている。数少ない動物実験による定量データも骨基質と骨髄を区別して評価していない。本来、内部被ばく核種の骨移行を評価するためには、血流から骨髄、さらには骨芽細胞・破骨細胞が多彩に連携・相互作用して織りなす骨形成・石灰化・リモデリングプロセスにおける核種の動態を解析するミクロンレベルでの新たな取り組みが必要である。本研究では、ウラン等の内部被ばく核種を投与したラットモデルを用い、骨髄細胞画分の核種動態解析や影響解析と量子ビームを用いた2次元的分布分析・化学形解析、局所線量解析、3次元計測を組み合わせ、新たな骨への核種移行評価法の確立に取り組む。 令和3年度はまず、SR-XRF(放射光蛍光X線分析)やマイクロPIXE(荷電粒子励起X線)分析などの量子ビーム元素分析による大腿骨組織の元素分布解析に着手した。骨の微細構造と対応した元素分布を得るために、骨組織分布解析用試料作製手法を検討した。また、骨試料のビーム分析における局所定量化のため、骨試料用の薄切分析標準の適正評価を行った。大腿骨に対する3次元計測についても放射光を利用したマイクロ吸収コントラストCTにより検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では軟組織と硬組織が複雑に入り組む構造を有する骨組織に対して、ミクロンレベルの新たな核種移行評価法の確立を目指す。内部被ばく核種のばく露動物モデルの大腿骨を対象とし、1)骨髄画分の核種動態・影響解析、2)大腿骨組織の薄切試料に対する元素分布・化学形・組織病理解析、3)局所線量解析、4)3次元計測により、総合的に骨組織への核種移行を評価する。令和3年度は各解析手法に適した測定試料調製法や検出条件について検討を行った。 1)骨髄画分の核種動態・影響解析:ウラン投与ラット大腿骨の骨髄画分に対し、ICP-MSによるバルク濃度の予備的測定を行った。血漿よりも濃集していることがわかった。 2)大腿骨組織の薄切試料に対する元素分布・化学形・組織病理解析:まず骨組織分布解析用試料作製手法を検討した。骨組織や骨髄の細胞を判別するため、測定試料の隣接切片に対し細胞特異的マーカーの免疫染色や重金属染色などの条件検討を行った。また自家蛍光画像による骨構造の把握についても試行した。また局所定量化のため、骨組織試料用の薄切分析標準の作製とその適正評価を行った。 3)局所線量解析:CR-39によるα線飛跡解析のための骨組織測定試料の作製条件を検討した。元素分布解析や組織病理観察と対応させることを考慮し、薄切試料支持体を選択した。 4)3次元計測:大腿骨の放射光マイクロCT用の試料作製を検討した。マイクロ吸収コントラストCT法による試行測定を行い、画像再構成等の解析系を構築した。大腿骨内部の骨微細構造の把握に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はこれまでに設定した測定条件をもとに骨組織の元素分布解析を中心に行う。順次動物モデルを作製し、測定・解析を進める。他の解析手法についても実サンプルの測定を進める。 1)骨髄画分の核種動態・影響解析: ICP-MSによるバルク濃度の測定を進め、用量依存・経時的データを構築する。骨髄画分に対するウラン測定の条件検討を行う。骨髄細胞のDNAダメージ評価のための基礎検討を行う。 2)大腿骨組織の薄切試料に対する元素分布・化学形・組織病理解析:大腿骨薄切試料に対する、マイクロPIXE、SR-XRFを進め、ウランの骨組織分布動態データを構築する。骨組織中のウラン局在部に対しマイクロビームを照射してXAFSによる化学状態解析を行う。化学状態解析のための標準試料についても適時改良を行う。隣接試料に対する各種染色像を対応させ、細胞レベルでのウラン分布動態を明らかにする。骨実質領域と骨髄領域でのマトリックスの違いを考慮して、骨組織試料用の薄切分析標準を改良し、その適正評価を行う。 3)局所線量解析:大腿骨薄切試料をCR-39に付着させ、α線飛跡解析用試料を作製する。α線飛跡検出のための、感光条件を設定する。骨組織像とα線飛跡とを精密に対応させるため、CR-39への組織像転写条件を検討する。試行的にα線飛跡解析を行う。 4)3次元計測:マイクロCT画像の解析を進めるとともに、マイクロ吸収コントラストCT法によるウラン検出を検討する。ウラン溶液やウランを吸着させたヒドロキシアパタイト等を用い、定量手法を確立する。
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