研究課題/領域番号 |
21H04963
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
椎木 弘 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70335769)
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研究分担者 |
西野 智昭 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80372415)
緒方 元気 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 特任講師 (80452829)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 検査技術 / 細菌識別 / 細胞活性 / 迅速検査 |
研究実績の概要 |
本研究では,細菌細胞の活性を多角的に評価する新しい検出原理を開発することを目的として,細菌特異性電極の開発とともに,細胞活性の高感度計測法の開発を行った。 アミノ基やカルボキシ基などの官能基を持つ分子,あるいは抗体などのレセプター分子を化学修飾した金属ナノ粒子構造体を開発した。構造体で標識した細胞を走査型電子顕微鏡観察した。構造体の粒径を分解能とした細胞表面解析を行った。抗O26抗体を修飾した構造体は大腸菌O26にのみ結合し,他の血清型大腸菌(O157)や黄色ブドウ球菌には結合しなかった。また,構造体で標識した細胞を暗視野顕微鏡で観察すると構造体の金属種によって異なる光散乱特性が得られ,このことから,構造体と抗体の組み合わせによって菌種の識別が可能になった。そこで,当初計画にはなかった光散乱に基づく細菌検出法の開発についても今後検討を行うこととした。 試料溶液中の細菌を捉えるために,化学修飾による自発結合性を利用して電極に細胞を濃縮・捕捉する機構について検討した。また,導電性高分子PPy膜を形成する際,重合反応に標的細菌を共存させ,細胞をPPy膜に固定することに成功した。溶菌によってPPyマトリクスに形成した人工抗体の選択性や自発結合性について検討した。マトリクスへの官能基(カルボキシ基)導入率を変化させたが,細菌の結合性に大きな影響は見られなかった。 細菌の生命活動は,細胞内での種々の化学反応によって支えられていることから,これらの化学反応に着目した細胞活性の評価について検討した。細菌分散液での電気化学計測において,好気下では溶存酸素の減少量から細胞の呼吸活性が評価可能であった。しかし,酸素とメナジオン(電子メディエータ)が共存した場合,電流応答が重複し,正確な活性計測が困難であった。そこで,電子メディエータについて再度探索することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種金属ナノ粒子,および高分子複合構造体を開発した。金属ナノ粒子は,金属塩を有機酸などの還元剤によって還元する化学還元法によって得た。高分子複合構造体は,各種金属塩とモノマーからなる混合溶液において,金属イオンがモノマーによって還元され,ナノ粒子を形成する反応と,モノマーが金属イオンによって酸化され,重合する反応が同時に進行する反応系によって形成された。これらのナノ構造体に,レセプターを導入した。その際,構造体表面を共有結合によって化学修飾する必要があったため,それらについて詳細に検討した。抗体導入した構造体を標識として標的細菌への結合性について評価した。構造体で標識した細胞の顕微鏡観察によって抗体修飾粒子の特異結合性を確認した。構造体で標識した細胞を暗視野顕微鏡で観察すると構造体の金属種によって異なる光散乱特性が得られ,構造体と抗体の組み合わせによって菌種の識別が可能となった。また,構想体の凝集によって散乱強度が大きく増大し,暗視野顕微鏡下における観察が容易になった。そこで,当初計画にはなかった,光散乱に基づく細菌検出法の開発についても今後検討を行うこととした。 酸素とメナジオン(電子メディエータ)が共存した場合,電流応答が重複し,正確な活性計測が困難であった。そこで,測定溶液を十分に脱気して溶存酸素を除去する操作を行ったが,完全に除去することは困難であった。また,溶存酸素の欠乏によって,細菌細胞の活性に影響を与えることが予測された。そこで,電子メディエータについて再度探索することとした。また,電子メディエータの選定において,細菌細胞の活性への影響についても十分な検討を行う必要があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
構造体で標識した細胞を暗視野顕微鏡で観察すると構造体の金属種によって異なる光散乱特性が得られ,構造体と抗体の組み合わせによって菌種の識別が可能となった。そこで,当初計画にはなかった,光散乱に基づく細菌検出法の開発についても今後検討を行うこととした。 酸素とメナジオン(電子メディエータ)が共存した場合,電流応答が重複し,正確な活性計測が困難であったため,溶存酸素の除去について追加検討することとし,電子メディエータについて再度探索することとした。
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