研究課題
植物の活動電位を介した高速電気シグナル伝達機構を解明するため、オジギソウ、ハエトリソウ、モウセンゴケを用いて以下の研究を行った。1)センサーラインの作成:モウセンゴケとハエトリソウにおいて、pHセンサー、Cl-とH+センサー、ROSセンサーのコンストラクトを作成した。2)チャネルロドプシン:ハエトリソウにおいてCl-を通すACR1-eYFP、モウセンゴケにおいてCa2+を通すxxm-mCitrineの蛍光を示す個体が得られ、残りの形質転換体も作出中である。3)活動電位発生伝搬関連因子の遺伝子破壊:ハエトリソウのゲノムリシーケンスを行い、高品質ゲノム配列情報を得た。モウセンゴケの22遺伝子、ハエトリソウの7遺伝子について、CRISPR/Cas9システムを用いて欠失変異体作成が進行中である。ガラス針電極を用いてモウセンゴケ柄の細胞内電位計測に成功した。GCaMP6f発現ハエトリソウの葉身に創傷を与えた際の電位変化および細胞内カルシウムイオン濃度の変化を同時測定する実験系を確立した。4)局在解析実験:解析対象タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現させ、局在解析を行うための実験系を構築した。オジギソウについて、ASLOB遺伝子のin situハイブリダイゼーションによる発現解析を行った。5)オジギソウの活動電位とカルシウム波の伝播速度比較とオジギソウ運動の適応的意義の推定:GCaMP6fを導入したオジギソウにおいて、活動電位とカルシウム波の同時計測を行い、両者がほぼ等速で進行することを論文発表した(Hagihara et al. 2022 Nat. Commun.)。同論文で、葉枕を欠失した変異体と野生型の昆虫捕食実験から、お辞儀運動が食害回避に寄与していることを示した。
2: おおむね順調に進展している
モウセンゴケ、ハエトリソウ、オジギソウについて形質転換パイプラインが完成し、順次、形質転換体を作出し研究をすすめている。形質転換効率が低く、研究がやや遅れているが、ベクターの改良や、形質転換条件、培養条件を改善することで、解決へと向かっている。
当初計画にそって研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 8件) 備考 (2件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 6412
10.1038/s41467-022-34106-x
http://www.nibb.ac.jp/evodevo
https://park.saitama-u.ac.jp/~toyotalab/index.html