研究課題/領域番号 |
21H04983
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
谷口 康浩 國學院大學, 文学部, 教授 (00197526)
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研究分担者 |
植田 信太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20143357)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 講師 (50735496)
那須 浩郎 岡山理科大学, 基盤教育センター, 准教授 (60390704)
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 半定住狩猟採集民 / 縄文人骨 / 骨考古学 / 社会組織 / 葬制 |
研究実績の概要 |
考古学チーム:令和4年8・9月に群馬県居家以岩陰遺跡第8次発掘調査を実施(調査期間48日)。人骨集積Aの調査が終了し、個体埋葬と合わせて約15個体の人骨を取り上げた。縄文早期人骨は既調査分と合わせて30個体以上に達し、腰部を切断する特異な埋葬法が明確となった。岩陰内約8㎡では岩盤まで全層の発掘が完了し、層序および各層の年代を確認した。さらに岩陰前庭部に新たに4㎡の調査区を設定し、層序と年代を確認するとともに、岩盤直上で早期中葉の人骨1個体を新たに検出した。また、押型文期(約10,000年前)の獣骨集中層を発掘するとともに、遺物包含層約3,500リットルから土壌水洗選別法により動植物遺体を回収し、利用された動植物の種同定を進めた。各層からの年代測定試料のサンプリング、土器の植物種子圧痕のレプリカ法分析等も実施した。 人類学チーム:出土人骨の形態分析・同定とCT撮影等の基礎整理、個体の同定と性別・年齢推定を行い、骨の破損や割れ方、人為的カットマークの精査から埋葬法を検討した。また、健康状態の古病理学的診断(歯牙咬耗、齲歯の検討)、食性の推定(骨コラーゲンおよび土器付着炭化物の炭素窒素同位体分析)を進めた。 DNAチーム:新たに核ゲノム5個体、ミトコンドリアゲノム1個体、任下および比較人骨資料61を分析し、居家以人骨の基礎的遺伝情報(性別・ハプロタイプ等)を取得した。核ゲノムSNP情報による遺伝学的系統および個体間の遺伝的類縁関係の解明、核ゲノム解析による表現型・体質の検討、ミトゲノムの全塩基配列による母系血縁関係、男性の性染色体ゲノムによる父系・母系血縁関係に基づいた個体間血縁関係の復元を行った。 研究成果の公表:日本人類学会および日本第四紀学会での公開シンポジウム開催と研究発表、国際・国内学術雑誌への論文投稿、『居家以人骨の研究Ⅰ』刊行。本研究の成果を公表するホームページを制作公開。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究対象である群馬県居家以岩陰遺跡の学術発掘調査は、研究計画どおりに毎年順調に進めており、縄文時代早期の埋葬人骨群、動物骨、植物遺体、土器付着物・圧痕などの資料収集と分析を進めている。特に縄文早期人骨の研究では、当初の期待を上回る調査成果が得られている。30個体以上の保存状態のよい早期縄文人骨が得られたことだけでも考古学上の大発見といえるが、それのみならず出土人骨からのDNA抽出に成功し、ミトコンドリアDNAの全長塩基配列や核ゲノムデータの解析に成功するなど、過去に前例のない重要な研究成果が得られている。また、縄文早期中葉押型文期(約10,000年前)の人為的灰層から出土した多量の獣骨や土壌水洗選別から回収した生活廃棄物は、早期縄文人集団の生活復元を可能とする質の高い資料であり、縄文文化の成立過程を究明する上できわめて重要な学術的価値をもつ。それらの数々の研究成果を原著論文で公表していくには多少の時間を必要とするが、現在までの研究進捗状況は、当初計画を上回る研究成果が年々蓄積していることから、順調に推進できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度以降の研究では、以下のような点を重点課題に位置づけ、所期の研究目的の達成に向けて、さらに共同研究を進めていく計画である。 1)早期縄文人(居家以人骨)の研究:居家以人骨の発掘調査をさらに進め、研究期間内に合計50個体程度の人骨個体を得たい。これまでの発掘調査では複数の遺体を密集して埋葬した人骨集積が確認され、周囲にさらに多くの人骨が埋葬されている状況が明らかとなっている。人骨の形態的分析を進め、各個体の性別・年齢・病気・健康状態を明らかにする。また、人骨抽出のコラーゲンの炭素・窒素同位体分析を進め、年代および古食性を調べる。ミトコンドリアDNAの全長塩基配列、および核ゲノムデータを蓄積し、居家以人骨の集団遺伝学的多型および個体間の血縁関係等を明らかにし、縄文早期の集団構成を明らかにする。 2)早期縄文人集団の生態行動系の研究:更新世終末期から完新世への移行過程で、日本列島の人類が生活体系をどのように組織し環境変化に適応したのかという研究視点から、縄文早期の集団が残した食料残滓や土器・石器・骨角器などの生活廃棄物を、土壌水洗選別法も用いて徹底的に回収し、動物考古学・植物考古学・分析化学などによる同定・分析を通して、早期縄文人集団の資源利用技術と生業活動、環境変動への適応などを実証的に復元していく。黒曜石の蛍光X線分析や土器の胎土分析をさらに進め、縄文早期の居家以集団の行動領域を明らかにしたい。 3)縄文早期の文化的・社会的水準の考察:縄文早期の葬制や埋葬習俗、海産貝製品などの装身具、黒曜石や土器の交換などに関しても、興味深い調査所見や出土資料が得られている。縄文早期の葬制と埋葬法の研究は重点課題に位置付けており、人骨出土状態の三次元測量と人骨のタフォノミー分析から、遺体集積や腰部切断をともなう埋葬様式を解明していきたい。
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備考 |
2023年3月に本研究プロジェクトのホームページを開設し、研究成果の概要を一般公開した。研究目的・研究組織・居家以岩陰遺跡の概要・研究成果の各階層から構成され、縄文早期人骨の骨考古学的研究(形質人類学・同位体分析・DNA分析)や、早期縄文人の生態行動(古環境・植物利用・動物利用・黒曜石産地・灰層の形成要因等)に関する研究成果を豊富な画像・図表とともに紹介する内容となっている。
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