研究課題/領域番号 |
21H04985
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
圦本 尚義 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80191485)
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研究分担者 |
馬上 謙一 北海道大学, 理学研究院, 助教 (70624758)
青木 順 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (90452424)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 地球化学 / 太陽風 / 太陽 / 原始太陽 / 希ガス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,前主系列星期から現在に至る46億年間の太陽活動の変遷を解明することである.そのために,46億年前に太陽風照射されたガスリッチ炭素質隕石;40億年前,30億年前,20億年前,10億年前,1億年前に太陽風照射された月面レゴリス;百万年前に太陽風照射された小惑星イトカワ粒子の分析を行う.これらの分析結果から解析されるkeVレベルからMeVレベルに至る運動エネルギーをもつ粒子放射スペクトルの比較により,太陽活動の経年変化を解明する.本研究は未踏の新規研究分野であり,その成果は恒星の進化を探るのみならず,原始惑星系円盤進化,惑星進化,宇宙風化,宇宙天気などの理解に向けて大きな意味を持つ.本年度は以下の研究成果が得られた. 1.同位体ナノスコープによる希ガスの組成分析・同位体分析:前年度に設計した誘電電荷検出システムを製作し実装した.本システムを用いた質量スペクトルの論文を出版した. 2.小惑星イトカワ粒子中に記録される太陽活動:百万年前までの太陽活動をJAXAはやぶさ探査機が持ち帰った小惑星イトカワ粒子から解読した.太陽風Heが粒子表面から深さ35nm領域に注入されていることがわかった. 3.月レゴリス中に記録される太陽活動:1億年前までの太陽活動をNASAアポロ計画により持ち帰った月レゴリス試料71501のイルメナイト粒子から測定した.太陽風HeとNeが表面から深さ20nm領域にイオン注入されていることがわかった. 4.隕石中に記録される太陽活動:ガスリッチ炭素質隕石NWA 801の希ガス分布イメージングを,計広領域イメージングシステムを用いて,その場分析により実施した.太陽風Heはマトリックス中に不均質に分布しており,コンドリュール中からは検出できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,同位体ナノスコープに誘電電荷検出システムを実装した.また,イトカワ粒子と月レゴリス試料から太陽風希ガスのイオン注入プロファイルを取得することができ,500万年前と1億年前の太陽風のエネルギー分布を解析中である.次に,開発した同位体ナノスコープの広領域イメージング分析法により,ガスリッチ炭素質隕石のマトリックス部に太陽風Heが注入され不均質に分布していることを発見した.以上の進捗は,当初の研究計画通りである.今後は,これらの太古の太陽風を保持する粒子の希ガス分布を詳細に解析するとともに,新しい試料を測定することで,各時代の太陽風のエネルギーと照射量を見積もることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度に誘電電荷検出システムによるリアルタイムでのデータ解析プログラムを作成し,He, Ne, Arの同位体の飛行時間同定を分析中に行うことができるようにする.百万年前までの太陽活動をJAXAはやぶさ探査機が持ち帰った小惑星イトカワ粒子から解読することを続ける.新たに,高エネルギーHeイオンの注入に注目し,太陽のCMEの活動とその頻度を研究する.1億年前までの太陽活動をNASAアポロ計画により持ち帰った月レゴリス71501のイルメナイト粒子から解読することを続ける.新たに,CME活動のエネルギー分布を求め,現在の太陽風との比較をする.また,新たに40億年前の太陽活動の解読を月レゴリス14301のイルメナイトを用い開始する.広領域イメージングシステムによりガスリッチ炭素質隕石NWA 801の希ガスの隕石内分布を研究を続ける.新たに,この隕石内におけるMeVからKeVの高エネルギーの希ガス照射のサーベイを行う.NASA小惑星探査計画で持ち帰られる小惑星ベンヌ試料の分析を行う. 以上により得られる新しい成果の議論により,本研究課題の核心をなす問い「過去に太陽はスーパーフレアを起こしたのか?」に解答することを目指す.
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