研究課題/領域番号 |
21H04993
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒川 知幸 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40377974)
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研究分担者 |
西中 崇博 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20773021)
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
疋田 辰之 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (70793230)
川節 和哉 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (90853531)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 頂点作用素代数 / 群の表現論 / 4D/2D双対性 / W代数 |
研究実績の概要 |
1) 荒川は、昨年度Sven Moller氏との共同で行った中心電荷-9のsmall N=4スーパーコンフォーマル代数の幾何学的実現を、C^2上の点のヒルベルト概形上の頂点代数の層を用いて一般化するアイデアを得た。このため、C^2上の点のヒルベルト概形や頂点代数の層の構成に詳しい桑原俊郎氏に新たに共同研究者に加え研究を行った。2) 荒川は,ポスドクとして雇用したXuanzhong Daiと共同で, base affine space G/U 上のカイラル微分作用素の層の研究を行った.これまでにG=SL_nの場合に,レベルが-n+1の場合に限りbase affine space上のカイラル微分作用素の層の大域切断が,T^*G/Uのアフィン化をその随伴多様体として持つであろうという予想に到達し,n=2,3の場合にはこの予想を証明した..3)荒川と川節は、Thomas Creutzig氏と共にA1型の場合のウェイト表現の圏の構造の分析を推し進め、量子群の表現の圏との間の具体的な一対一対応を構成した。 4) 山内は、W3代数をアフィン代数の可換余集合構成法から得られるレベル3の頂点代数の見地から研究を行った。A2型の例外的な共形埋込みにおけるW3代数のフュージョン規則が定める位数3の対称性が果たす役割を上記見地から調べた。5) 西中は、4次元N=2理論に付随する頂点代数と Nekrasov 分配関数の関係を調べるため、ゲージ化された Argyres-Douglas 理論の Nekrasov 分配関数の計算法を開発した。その結果、異なる4次元理論に付随する頂点代数の指標の間に成り立つ関係式が、Nekrasov 分配関数についても成立することを発見した。また、4次元N=3理論をS^1コンパクト化した際の頂点代数の指標が3次元N=4理論の分配関数とどのように関係するかを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Sven Moller氏、桑原俊郎氏と行った共同研究により、C^2上の点のヒルベルト概形のカイラリゼーションに成功した。C^2上の点のヒルベルト概形は中島箙多様体の特別な場合であり、我々の手法は一般の中島箙多様体の場合に拡張される時対される。これにより、今後高次元場の理論から現れる膨大なクラスの頂点代数の研究が可能になると期待される。その他にも、荒川と川節がThomas Creutzig氏と行った共同研究により、アフィンリー環のウエイト表現の圏が良い構造を持つことが明らかになった。これにより、表現論の新しい研究領域を切り開いた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った研究を論文としてまとめ、世界各地の国際研究集会・セミナーで講演を行う。 荒川は中島箙多様体のカイラリゼーションについて引き続き研究を行う。荒川と川節は引き続き荒川とCreutzigとの上記共同研究を推し進め、許容レベルのアフィンリー環のウェイト表現の圏の構造を決定する。山内は、W3代数を生成系に持つ頂点代数を構成するため,有限次元代数であるグライス代数の部分代数としての実現可能性を調べ,それを頂点代数に拡張する方向で研究を行う。西中は、対応する頂点代数が知られている4次元の Arygres-Douglas 理論のうち、Nekrasov 分配関数の計算法が知られていないものが無限個存在する。それらの分配関数をAGT対応を用いて計算する手法を開発し、頂点代数と Nekrasov 分配関数の関係を明らかにする。また、4次元N=2理論と3次元N=4理論のそれぞれに付随する頂点代数の関係を解明する。疋田の研究については、標準基底の明示公式を求めるのは基本的かつ一般に難しい問題であり、例えばグラスマン多様体の余接空間などの例ではtautologicalなベクトル束で書いたときに何かしらの三角性を持つだろうといった観察はできるが, 一般的に上手く書き下すのは難しいようにと思われる. 一方でシャッフル代数的な記述ではそれをtautologicalなベクトル束の言葉に書き直すのは非自明な問題だが, バー対合が自明化されるためwheel条件を満たす対称多項式をたくさん見つけるという組み合わせ論的な問題に翻訳される.これを用いてより多くの例に対して明示公式を書き下せるかどうか調べる.
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