研究課題/領域番号 |
21H04996
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
|
研究分担者 |
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助教 (20633093)
桑原 秀治 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 助教 (50505394)
増野 いづみ 岡山大学, 惑星物質研究所, 特任助教 (50822102)
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
|
キーワード | マントル / 強親鉄元素 / レオロジー / 始原的リザーバー / 川井型マルチアンビル |
研究実績の概要 |
大容量川井型マルチアンビル装置(KMA)の最近の技術革新により、今まで困難であった圧力、温度での高圧実験を展開できるようになったことを背景に、KMAの特性を最大限に活かすことでマントルの未解決の諸問題に様々な角度から取り組む研究課題である。マントルの強親鉄元素の高濃度異常の原因として提唱されているレイトベニア仮説論争の検証、下部マントルに存在するとされる始原的リザーバーの起源を解明するために、超高圧下における分配実験、変形実験、熱電測定といった新しい視点の実験から制約する。これらの結果を整合的に説明できる統合的なマントル進化モデルを創出することが本研究の目的となる。 本年度は、本研究の多角的アプローチのうち以下の3つの研究において成果を得ることができた。1)レイトベニア仮説を検証するために高圧下での溶融鉄とケイ酸塩メルト間の強親鉄元素の分配実験を圧力25GPaで行い、回収試料の分析を東京大学平田研究室のレーザーアブレーションICP-MSで行った。先行研究における川井型マルチアンビル装置での最高圧力実験である18GPaの圧力の結果と異なり、強親鉄元素はケイ酸塩メルトにより分配される結果が得られた。2)始原的リザーバーの存在がBEAMSモデルで説明できるかを検証するための試験的に低歪量の高圧変形実験を行った。ブリッジマナイトとポストスピネルを直列に接した一軸圧縮実験を行ったところ、両者に違いは見られなかった。また、ブリッジマナイト単相の構成則を決定し、ブリッジマナイトがマントル主要鉱物で最も硬いことを明らかにした。3)下部マントルと核の間の熱交換を制約するため、パルス加熱法による熱伝導度測定でブリッジマナイトの熱伝導度の組成依存性を決定したところ、今までの研究に比較して、AlやFeといった主要な不純物は大きく熱伝導度を下げることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
5年間の研究計画全体において基盤的な設備である軟X線スペクトル検出器の付いたフィールドエミッション型EPMAの導入を行い、熱電測定におけるケイ酸塩試料の酸化還元状態の推定、及び鉄合金中の強親鉄元素の濃度の定量測定に向けて研究環境の整備を進めることができた。D111型マルチアンビル変形装置を用いた変形実験においては、初年度から顕著な成果を上げることができた。強親鉄元素分配実験も最初の分析を行い、ケイ酸塩中の微量な濃度の強親鉄元素はLA-ICPMSで測定可能であることが確認された。今後の30GPaを超える高圧力下での実験に向けて順調な滑り出しであると言える。これらを総合すると初年度としては当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に新規導入した実験試料の酸化還元状態を決定するのに必要である軟X線分光器を搭載した電解放出型電子マイクロプローブ装置に新たに分光結晶を取り付ける。これにより初年度に取り付けた分光結晶では測定困難であった強親鉄元素の同定が可能となり、強親鉄元素の分配を決定することを可能とする基盤設備を整備する。さらに、分担者の異動に伴い、惑星物質研究所での頻繁な実験が困難となったため新たに2名の科研費ポスドクを雇用して、円滑な研究推進を図る。
|