研究課題/領域番号 |
21H04997
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
吉田 道利 国立天文台, ハワイ観測所, 特任教授 (90270446)
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研究分担者 |
冨永 望 国立天文台, 科学研究部, 教授 (00550279)
大野 良人 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (20818017)
小山 佑世 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (40724662)
尾崎 忍夫 国立天文台, 先端技術センター, 講師 (60532710)
田中 雅臣 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70586429)
柳澤 顕史 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (90311183)
本原 顕太郎 国立天文台, 先端技術センター, 教授 (90343102)
守屋 尭 国立天文台, 科学研究部, 助教 (90779547)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 重力波天体 / 中性子星合体 / 補償光学 / 近赤外線分光 |
研究実績の概要 |
中性子星合体の電磁波対応天体の網羅的なスペクトル理論モデル構築を継続した。2022年度の研究により、ストロンチウムやランタン、セリウムといった元素の特徴が近赤外線域に強く現れることが明らかになった。これを踏まえて、近赤外線スペクトルの時間変化についてモデル化を行うことに成功した。本研究で開発する高感度広帯域近赤外線分光装置によりこれらの特徴を捉えることで、中性子星合体時に合成される重元素量を定量化できることが期待される。また、Euclid宇宙望遠鏡による遠方超新星の観測シミュレーションを実施した。この結果、最大で年間10個程度の遠方超新星が本研究課題で開発する分光装置で観測可能であることを明らかにした。 レーザートモグラフィ補償光学に対応した高感度広帯域近赤外線分光装置の開発を継続した。2022年度は、光学系・制御系のサブシステムの概念設計を実施した。一方で、将来計画として可視光域も含めた超広帯域分光装置を可能とするために、可視分光装置を取り付けるための拡張性の検討を行った。その中で、当初の想定に反して分光装置の手前の前置光学系の事前調査が、分光装置そのものの設計に大きな影響を及ぼすことが分かった。このため、当初は2022年度中に行う予定であった分光器機械系・真空冷却デュワーの概念設計については翌年度に行うこととした。また、近赤外線検出器の貸与および、分光器の設置と調整について、国立天文台ハワイ観測所と打合せを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スペクトル理論モデル構築については、順調に進展しており、いくつかの重元素について、特徴的なスペクトルに関する予測を行うことに成功した。超新星関係のシミュレーション研究も現実的な観測予測を行うことができている。 高感度広帯域近赤外分光装置開発では、光学系および制御系の概念設計を完了することができたが、将来計画に必要な、前置光学系の検討を進める中で、当初の想定に反してこの部分の十分な事前調査が分光装置そのものの機械系および冷却系の設計に大きな影響を及ぼすことが判明し、全体スケジュールをおよそ3か月延長せざるを得なかった。このため、進捗は当初想定よりもやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
中性子星合体の電磁波対応天体の網羅的なスペクトル理論モデル構築をさらに進め、多様な重元素の電離状態に伴う遷移を包括的に扱い、本研究で開発する広帯域近赤外線分光装置の観測で、どのように中性子星合体時に合成される重元素量を定量化するかを詳細に検討する。また、遠方超新星の観測数と、原子核反応の反応率との関係を明らかにし、遠方超新星における鉄までの元素合成に関する研究を進める。 レーザートモグラフィ補償光学に対応した広帯域近赤外線分光装置の開発については、光学系および機械系に関しては、詳細設計に基づいて各コンポーネントの製造を行う。検出器系は、試験環境を構築して実験室における試験を開始する。国立天文台ハワイ観測所と連携して、分光装置のすばる望遠鏡への装着と試験手続きについての準備を行う。
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