研究課題/領域番号 |
21H05005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山村 和也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60240074)
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研究分担者 |
有馬 健太 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10324807)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | プラズマ / 超精密加工 / ワイドギャップ半導体 / パワー半導体 / 難加工材料 |
研究実績の概要 |
2021年度に高密度プラズマを生成する加工ヘッドを搭載した5軸数値制御プラズマ加工装置を試作した。本装置では、従来の3軸(XYZ)装置に比べ、本5軸(XYZBC)装置では加工ヘッド(B軸)とサンプルステージの回転軸(C軸)が追加されている。5軸制御を適用することにより、曲率が大きなレンズ金型や任意自由曲面を持つサンプルを加工する際に、プラズマジェットの中心軸が常に加工面に対して垂直にできるため、プラズマ中の反応ラジカルがサンプル表面に作用する領域における流れ場分布が常に対称となり、単位加工痕の形状変化による加工特性の変化を抑制できる。 また、プラズマヘッド近傍には発光分光測定器と2Dサーモグラフィを設置し、加工速度を規定する反応ラジカル濃度および加工点温度をリアルタイムにモニターして解析できる。更に、差動排気型質量分析計と吸引装置を組み込んだリアルタイムのサンプリングシステムも構築した。本システムにより、加工量に比例して発生する反応生成物の量を測定し、実加工速度をリアルタイムにモニターできる。 CF4プラズマとビトリファイドボンドダイヤ砥石を用いたAlN基板のプラズマ援用研磨において、ドレッシングを実施しなくても、ビトリファイドボンド砥石のボンド材主成分であるシリカがエッチングされ、リアルタイムに適度なドレッシング作用が生じることがわかった。本現象により、砥石の目詰まりが起こらず、また、CF4含有プラズマの照射によりAlN基板の表面に除去されやすいAlF3軟質層が形成され、プラズマオートドレスとプラズマ改質の相乗効果により、プラズマ照射無しの場合と比較して約2倍大きな研磨レートが得られた。プラズマ援用研磨法を用いてAlN基板の仕上げ研磨を行ったところ、従来の機械研磨法の限界を突破するSa表面粗さ3 nmを達成するとともに、脱粒フリーな平滑表面を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に、自由曲面加工に不可欠な5軸プラズマ加工装置を試作した。また、高精度数値制御システムの構築に必要なラジカル濃度、加工点温度、反応生成物量のin-situ計測システムも装備した。2022年度以降には、試作した5軸加工・in-situ計測システムにおいてエッチングレートのリアルタイムフィードバック制御を適用することにより、高安定なプラズマ加工システムを実現し、ナノ精度形状創成プロセスの開発が期待どおり進展できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に試作した5軸数値制御プラズマ加工装置を用いて、形状精度1 nmを達成するSiCセラミックス製非球面ミラーを作製する。局所プラズマを用いた超精密数値制御加工による形状創成において、エジンバラ大学との国際共同研究により、ミリメータスケールから原子スケールにおけるプラズマ加工現象を予測するマルチスケール3Dシミュレーションモデルを開発する。リアルタイムに取得する種々の計測データを、開発したシミュレーションモデルに入力して基板表面におけるエッチング状態を推測し、加工物の表面形状の変化によるガス流れ場の変化や表面温度の変化に伴うエッチングレートの変化に対応してエッチングレートが一定になるようにプラズマ生成電力や走査速度をフィードバック制御することで、超安定したプラズマ加工システムを実現し、ナノメータ精度の非球面ミラー創成プロセスを実現することを目指す。
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