研究課題/領域番号 |
21H05007
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
深潟 康二 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80361517)
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研究分担者 |
山本 誠 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (20230584)
岩本 薫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50408712)
長谷川 洋介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30396783)
塚原 隆裕 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 准教授 (60516186)
福島 直哉 東海大学, 工学部, 講師 (80585240)
守 裕也 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80706383)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 流体力学 / 機械学習 / 流れの制御 / 低次元モデル / データ駆動 |
研究実績の概要 |
機械学習を用いた流れ制御手法構築という目標を達成するための要素研究を推進した。まず畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の汎化手法の検討と行い、流体場の低次元化におけるネットワーク構造等の選定のガイドラインを構築した。また、制御入力を含む2次元円柱周り流れに対して低次元潜在ベクトルを取得し、スパース回帰を用いてその支配方程式を導出し、最適制御理論を組み合わせることにより渦放出抑制の制御則を構築した。また、粘弾性流体チャネル乱流の代理モデルを作成し、速度場は支配方程式ベースで解きつつ構成応力場を推定しながら時間進行させるDNS-CNN統合計算を実現した。 CNN以外の手法の調査としては、強化学習を用いて壁乱流の摩擦抵抗低減のための効果的な制御則の探索を行い、従来の線形理論に基づく制御則に比べて、飛躍的な制御効果の向上を確認した。流れ場に付随するスカラー場の推定に関しては、物理法則を考慮した深層学習により、限られたセンサ情報に基づいて未知のスカラー源を予測するためのアルゴリズムを開発し、その有効性を確認した。また物理法則を組み込んだガウス過程を適用することにより、不確かさを含めた予測を行った。さらに、深層強化学習を適用したスロット状吹出し・吸込み制御による平行平板間乱流の摩擦抵抗低減を試み、約6%の抵抗低減効果を確認した。 実応用に向けた研究としては、機械学習による任意の波状リブレットの抵抗低減効果予測モデルの構築を実施した。DNSを用いて得られた約1000ケースのリブレット形状による抵抗低減率のデータをニューラルネットワークで学習させ、形状パラメータと抵抗低減率の関係を定性的に捉えられることを確認した。また、航空機着氷に関して種々の着氷形状の予測とヒータを用いた防氷性能の評価を行い、脳動脈瘤のCFDによる血行動態を用いて破裂予測相関式を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標を達成するための要素研究のうち、低次元潜在ベクトルを取得しスパース回帰を用いてその支配方程式を導出し制御理論を組み合わせることによって制御則を構築するという一番基本となる戦略が、2次元円柱周り流れという簡単な問題設定に限定されているものの、ある程度うまく行きそうであるこということが確認できたため。また、CNN以外の機械学習手法の検討や、より複雑な流れへの適用や実応用を見据えた要素研究も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、まず要素研究を重点的に進めていく。特に機械学習を用いた2次元円柱周り流れの渦放出制御に関しては、今年度、潜在空間において構築した制御則の効果を実空間における直接数値シミュレーション(DNS)によって検証したところ、渦放出の抑制は確認できたものの、潜在空間において期待されたほどの制御効果には至らなかった。これは潜在空間における支配方程式が有する非線形性による問題点が残っているためであると考えられる。次年度はこの問題点を改善できるようなアプローチを試行する予定である。また、スカラー場の推定、乱流の受動制御、着氷現象など他の要素研究に関しても機械学習による予測と改善を試みる。
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