研究課題/領域番号 |
21H05011
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村松 淳司 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (40210059)
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研究分担者 |
横井 俊之 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (00401125)
藪下 瑞帆 東北大学, 工学研究科, 助教 (00835142)
真木 祥千子 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 講師 (10747299)
西堀 麻衣子 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (20462848)
大須賀 遼太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30874250)
脇原 徹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70377109)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2024-03-31
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キーワード | ゼオライト / 同型置換 / 精密構造解析 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究では、「よく定義されたゼオライト」の合成と放射光計測を用いた精密構造解析を目的としている。昨年度は、Alを骨格内に含有するCHA型ゼオライトを合成する際、前駆体にAlペアサイトが豊富に存在する非晶質アルミノシリケートを用いることで、Alペアサイトを豊富に有するCHA型ゼオライトが合成可能であることを見出だした。そこで本年度は、本手法の適用可能範囲を拡大するため、1)異なる骨格構造を有するゼオライト、2)異なる金属種を骨格内に有するCHA型ゼオライトの合成を検討してきた。1)について、MOR型やMFI型を候補として検討を進めたところ、これらの骨格構造においてもCHA型ゼオライトと同様にAlペアサイトを効率的に骨格内に構築できることが明らかとなった。また、Gaを骨格内に含有するCHA型ゼオライト合成を検討したところ、Gaペアサイトも構築可能であることがわかった。これらの結果は本合成手法の汎用性の高さを明確に示している。 解析面においては、昨年度に引き続き、X線吸収分光を用いた金属種の局所構造解析を行なうと共にX線発光分光手法を取り入れることでより精密に局所構造を理解することを目指した。昨年度は、Fe含有MWW型ゼオライトのメカノケミカル(MC)合成において、前駆体中の金属種の局所構造がゼオライト結晶中に転写されることを見出だした。この知見を基にその他のゼオライト構造(MFI型、CHA型)についても検討を行った。結果として、MWW型のみではなく、その他の構造においても前駆体中の局所構造が転写されている様子が観測された。また、Fe含有ゼオライトのX線発光分光を測定したところ、吸着水の有無でFe種の状態が異なることがわかったため、この現象についても今後詳細に検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成班を解析班が連携し、互いに情報をフィードバックすることで順調に研究を推進することができている。合成面に関しては、ある特定の骨格、金属に特化した合成手法ではなく、様々な構造、金属種へと展開可能な汎用的な合成手法が確立できつつある。また、骨格内金属種の位置と触媒活性との相関についての検討も開始している。これまでは、Alを含有するゼオライトを中心に検討してきたが、FeやGa種など、放射光計測において比較的測定しやすい金属種の位置制御も実現できているため、解析面に与える効果も大きい。また、合成可能な骨格構造が増えたため、系統的に材料を解析することが可能となってきている。 解析面については、当初予定していたX線吸収分光のみではなく。発光分光によるデータも蓄積されてきたため、局所構造を理解する上でより多くの情報を扱えるようになってきた。新しい解析手法に挑戦することで、研究開始当初は予測できていなかった解析結果も得られている。本年度の初期検討において、吸着水の存在の有無でFe種の化学状態に違いがあることがわかったため、吸着水をプローブ分子としてX線発光分光測定へと展開している。また、非晶質から結晶への転移過程を理解するためのX線全散乱・異常散乱の測定も引き続き行っている。当初は、in-situ測定の難易度が高い測定であるため、解析対象になる系が限定的であった。依然として難易度は高いものの、in-situ測定のセットアップを改良することで測定可能な範囲を拡大できている。
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今後の研究の推進方策 |
合成については、これまでに見出した合成手法を汎用的な手法とできるように検討を進める。また、骨格内の金属種のみではなく、骨格外の金属種や、イオン交換処理によって生成するカチオン、クラスター種などの位置や化学状態も制御することによって、より実用的なゼオライト合成へと展開を検討する。これらのゼオライトについては、触媒活性評価も並行して進めることで、構造-活性相関について深堀りしていく。 解析については、X線吸収・発光分光手法を中心に金属種の局所構造解析を進める。来年度は、構造-活性相関の解明についても検討を進めるため、operando測定を実施する。また、吸着水をプローブ分子とした金属種の局所構造解析にも注力する。この解析については、in-situ IR測定の結果と併せることで、ゼオライト(金属種)側、吸着分子(水)側の双方の情報を得ることができるため、骨格構造やFe種の量が異なる試料を丁寧に解析することで、吸着状態とFe種の化学状態および局所構造の相関の解明を目指す。合成過程の追跡については、これまでに確立したX線異常散乱・全散乱の測定手法を用いて、より実用的なゼオライトに対して、合成過程の局所構造変化について学理の深化を目的とする。
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