研究課題/領域番号 |
21H05012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 巌 東京大学, 物性研究所, 教授 (00343103)
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研究分担者 |
安藤 康伸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00715039)
吹留 博一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10342841)
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70373305)
細野 英司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80462852)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 原子層 / ボロフェン / ホウ素 / 合成 / HB / ボロファン / 銅表面 |
研究実績の概要 |
本研究では新たな単原子層材料であるホウ素の単原子シート「ボロフェン」をベースに最軽量の情報およびエネルギーキャリア材料の開発に取り組んでいる。ボロフェンおよび、その誘導体は多様な元素組成と原子構造を取ることができ、その結果、多種多様な電子状態が形成され、次世代通信帯GHz-THz応答ならびに電池(蓄エネデバイス)への応用が期待されている。素子材料となりうる様々な試料の合成と評価を実施する中で、B/Cuヘテロ界面研究において大きな進展があったので、ここで取り上げる。 ボロフェン誘導体について、本年度は電池などの機能性を探るために代表的な電極物質である銅(Cu)を対象に結晶表面上にホウ素(B)の二次元結晶を作製し表面分析法で評価した。Cu(111)結晶表面に超高真空下でホウ素を加熱蒸着すると2次元秩序相(√73×√39-B)が形成される。この構造解析を陽電子回折法で実施した結果、CuとBから成る「銅ホウ化物(Cu-Boride)」を形成し、さらにB/Cu界面でB原子とCu原子の一次元鎖が交互に配置した2次元構造を有していることが分かった。3次元物質ではBとCuは完全に分離することが知られており、本研究にて界面2次元系では化合物が形成されることが初めて明らかとなった。X線光電子分光実験によって、その電子状態(化学状態)も調べた結果、この電子配置は炭素(C)の単原子鎖であるCumulene分子と同じであり、本研究によりホウ素原子が炭素原子と同じ電子数となることで安定性を得る重要な化学的知見を得ることができた。そこで、本研究ではこのようなB原子鎖をBumuleneと名付けた。今後、これらB/Cu界面における物理・化学的理解をもとに、実材料の開発へ活かす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
試料合成が着実に実施できるようになったため、研究目的に対するデータが実際に得られ、理論と実験グループの間の連携も具体的になっている。その結果、材料開発として重要な界面研究において大きな成果が得られていると共に、「1次元ホウ素」といった新しい学理創成にも展開ができている。今後、さらに多くの研究成果が期待できる状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために、丁寧な試料合成と物質評価に努めた結果、Cu/B界面ではこれまでの常識に反して銅ホウ化物が成長し、さらにB原子鎖で構成されていることが分かった。その結果、「1次元ホウ素」といった新物質分野を開拓することになった。本物質群は新たな学理を創成するだけでなく、新材料の開発において今までにない知見も与えることが期待される。そこで、本研究ではこれまでの行なってきたボロフェンなどの「2次元ホウ素」に加えて、新たに「1次元ホウ素」も研究対象として今後の研究を推進して行く。
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