研究課題/領域番号 |
21H05016
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水口 将輝 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (50397759)
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研究分担者 |
小野 新平 一般財団法人電力中央研究所, 材料科学研究所, 上席研究員 (30371298)
大江 純一郎 東邦大学, 理学部, 教授 (40510251)
小野 寛太 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70282572)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | ナノ超構造 / スピントロニクス / スピンカロリトロニクス / 異常ネルンスト効果 / 磁性材料 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ナノスケールの磁性ナノ超構造を基軸とし、熱とスピンの相関現象に係る革新的な物理を解明しその機能を極限まで引き出すことである。今年度は、Co母相にGe粒子をナノスケールで分散させたグラニュラー構造が異常ネルンスト効果に与える影響を調べた。また、ナノ構造の画像の特徴量と物性の相関を主成分分析によって調べ、機械学習からの特性向上を狙うアプローチについても考察した。その結果、Co薄膜と比較して、Co-Ge薄膜の異常ネルンスト係数が増大することを確認した。観測された異常ネルンスト効果の増大には、縦ゼーベック効果と異常ホール効果の両者からの寄与があることが明らかになった。また、強磁性材料であるCoFeBの上に 強誘電体であるHfOをブロックレイヤーとして積層した材料を用いて、電気二重層による電界効果の実験を行った。その結果、電気二重層の形成に伴って、HfO中の酸素の移動が起き、磁性材料の酸化還元が電圧によって制御できることが明らかになった。磁性体中の熱電効果について、理論的研究も進めた。磁性体中の集団励起であるマグノンによって駆動される電流について数値シミュレーションを用いた解析を行った。その結果、磁化構造がある場合の熱電効果について、温度勾配に対して垂直方向に流れる異常ネルンスト電流を計算することに成功した。系にスカーミオン構造がある場合、磁気スカーミオンの個数によって異常ネルンスト電流が増大することも分かった。さらに、熱・スピン機能変革のための計測とマテリアルズインフォマティクスとを組み合わせることにより、スピンを有する物質の角度分解光電子分光実験を飛躍的に効率化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラニュラー構造や多層構造などのナノ超構造における熱電機能の制御や増大化などの研究がおおむね計画通りに進んでいる。また、今年度の目標であった電圧による磁性材料の酸化還元制御にも成功した。さらに、磁性体中の熱電効果の理論的解析や、計測とマテリアルズインフォマティクスとの組み合わせによる解析の効率化も着実に進んでおり、その進捗度もおおむね順調であるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノ超構造における異常ネルンスト効果の増大機構の解明や主成分分析によって得られた主成分の物理的意味づけを進めるとともに、多層薄膜における構造と異常ネルンスト効果の相関を明らかにする。また、ポーラス薄膜構造を作製し、トポロジカルなナノ構造が熱・スピン機能に与える影響を調べる。加えて、異常ネルンスト効果の電界変調効果の研究も進める。さらに、放射光を用いた走査型透過X 線顕微鏡計測により、熱平衡状態における構造特性だけでなく、静的あるいは動的熱勾配を印加した状態でのナノ超構造の微細磁気構造の同定を進める。
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