研究課題/領域番号 |
21H05020
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鶴田 健二 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (00304329)
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研究分担者 |
竹澤 晃弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10452608)
松田 理 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30239024)
畑中 大樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (60601771)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | トポロジカルフォノニクス / フォノニック結晶 / トポロジー最適化 / 表面弾性波イメージング / スピンメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究では,計算科学的バンド設計に基づいてトポロジーで保護されたエッジモードの発現を予測,力学系にモデル化・可視化,その知見からエッジモードを介した極めて低損失な音波・弾性波伝搬実現を目指している。初年度は各班で以下の取組・成果が得られた。 【(岡大+早大)班】 これまでに設計したC3v対称性を持つ水中2次元フォノニック構造を薄膜系に拡張し,kHz~MHz帯でエッジモードが発現するフォノニック構造を設計した。並行して,既知構造をベースに,位相最適化法を用いてより高いロバスト性を持つ最適構造探索に成功,また,それらのプロトタイプ構造を3Dプリンタで試作し,レーザードップラー計測を行った。一方,GHz帯の設計構造は北大班ならびにNTT班で試作・評価を実施中である。 【北大班】 すでに着手しているフォノニック構造中を伝搬する表面弾性波の時間分解計測による可視化については,強誘電体基板上の銅ピラー構造によるフォノニック結晶で分散関係取得のための予備的な測定を行った。マクロスコピックなメカニカルフォノニック結晶におけるトポロジカルエッジモードの可視化については,回転可能なメカニカルグラフェン構造を設計・製作し,モーションキャプチャーシステムによる同構造の振動測定と解析を進めている。 【NTT班】(岡大+早大)班がGHz帯で設計したトポロジカルフォノニック導波路構造をMEMS作製技術の援用により試作し,エッジモード励起も確認した。並行して,磁性体装荷のGHzフォノニック結晶素子を作製し,強磁性マグノンによる共振周波数とQ値の変化を確認した。同時に,有限要素法を用いた数値解析法を構築し,計算による当該素子構造における磁気弾性変調効果のシミュレーションを行った。 また,代表者・分担者・協力研究者による「トポロジカルフォノニクス研究会」を年度内に4回オンライン開催し多数の参加者を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度目標とした,kHz~MHz帯およびGHz帯でエッジモードが発現するフォノニック構造設計はいずれも成功し,それぞれ実証実験まで進行している。位相最適化法によるバンド構造最適化も順調に進んでいる。また,薄膜フォノニック構造中を伝搬する表面弾性波の時間分解計測による可視化も試みており,薄膜GaAs構造への光強励起による試料の劣化が問題となっているが、試料を真空中に配置するなどの対策を検討している。より光耐性の大きなバルク基板のフォノニック結晶では分散関係の予備的な評価に成功しており,測定・解析手法は確立されつつある。力学系モデル構築に関連しては,量子ホール系のアナロジーとなる回転機構を持つメカニカルグラフェン構造についての研究が順調に進んでいる。これらの状況から,中間評価に向けおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の準備を踏まえ,各班がそれぞれ以下を実施し,次年度末までに中間目標到達を目指す。 【(岡大+早大)班】初年度までに予備的に設計した,薄膜上のフォノニック構造をkHz帯からMHz帯・GHz帯へ拡張,NTT班・北大班と共にエッジモード発現を実証する。並行して,位相最適化法によるバンドトポロジーに関する最適設計行い, kHz~MHz帯は3Dプリンタ等で試作,GHz帯の最適設計構造は北大班ならびにNTT班に送り,それぞれで試作・評価する。これらを通して,計算科学手法に基づくトポロジカルフォノニクス設計法の有用性を示す。 【北大班】弾性波伝搬の時間分解計測技術を,(岡大+早大)班が設計してNTT班が作製するGHz帯トポロジカルフォノニック導波路構造のエッジモード伝搬の可視化へ適用する。並行して,(岡大+早大)班が計算したバンドトポロジーを再現する力学系モデルを2次元ウェーブマシンとして実装し,その時間計測により事象可視化を行う。 【NTT班】(岡大+早大)班がGHz帯で設計するトポロジカルフォノニック導波路構造を試作し,所望の周波数帯でエッジモード励起とロバスト性を実証する。並行して,フォノニック構造上に磁性体を装荷した構造を試作,伝搬するエッジモードとスピンとのカップリングとモード変換などの制御可能性を検証するとともに,そのモード形状とマグノン間の相互作用を有限要素法による計算手法により明らかにする。 今後,参加機関間の学生相互派遣による研究遂行を,感染拡大の波の間を縫い複数回に分けて実施することを試みる。また,定期的にオンライン開催してきた「トポロジカルフォノニクス研究会」を継続,さらに応用物理学会において関連するテーマでのシンポジウムを企画・開催する。
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