研究課題/領域番号 |
21H05029
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
袖岡 幹子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60192142)
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研究分担者 |
田中 正人 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (00294059)
どど 孝介 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (20415243)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | ネクローシス / 脂質過酸化 / フェロトーシス / ネトーシス |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、酸化ストレスにより誘導されるネクローシス(壊死)様の細胞死を選択的に抑制するIndolylmaleimide(IM)誘導体IM-54を開発し、本ネクローシスに脂質過酸化が関与していることを明らかにするとともに、心虚血再灌流障害モデルにIM誘導体が抑制効果を示すことも見出した。本研究では、IM誘導体を用いて本ネクローシスの制御機構を明らかにする事を目的とする。その際には、我々がこれまで開発してきたコンパクトな蛍光団であるNBDを利用したTurn-ON蛍光アフィニティーラベル化法を用いて、標的タンパク質の同定を進めることを計画する。さらに、脂質過酸化が関与するプログラム細胞死の1つであるNETosisに関してもIM誘導体による抑制が見られる事から、何らかの共有するメカニズムを想定し、独自に開発したNETosis制御化合物を鍵としてその解析を進める。 本年度はIM誘導体に関してすでに得られている様々な構造活性相関を元にNBDプローブの設計と合成を進めた。その結果活性の低下の見られた誘導体もあったが、ある程度の活性を維持した誘導体を得ることができた。さらに得られた誘導体を用いて生細胞イメージングも行い、細胞内で特定のオルガネラが蛍光標識されることを見出した。今後標識されるタンパク質を同定する予定である。 また、NETosis制御化合物に関しては、これまでに見出したNETosis阻害剤の1つがリソソーム中に存在するミエロペルオキシダーゼ(MPO)を標的とすることを明らかにし、MPOがNETosisにおける脂質過酸化物の生成に重要な役割を果たすこと、また、生成した脂質酸化物が核膜に直接作用して核の膨潤を引き起こすことを明らかにした。さらに他のNETosis制御化合物に関しても、NBDプローブ化を進めるための基礎的な構造活性相関を得るべく、構造展開と活性評価を進めた。今後得られた構造活性相関を元にNBDプローブの設計・合成を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画通り、化合物の構造展開とNBDプローブの開発を進め、その解析にも着手することができた。また、NETosis制御化合物に関してMPOを標的として同定する際に、CRISPR/Cas9法を用いた遺伝子編集技術に関しても基盤が構築できたため、今後様々な化合物の標的同定にも適用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はIM誘導体およびNETosis制御化合物、いずれに関してもNBDプローブを用いた解析を進める。またその際には、より網羅的な解析が可能なようにプロテオーム解析の基盤構築も計画する。化合物の標的候補として同定されたタンパク質に関しては、特異的阻害剤を用いた実験や遺伝子編集技術を用いて順次ノックアウト実験を行い、標的とする細胞死に関連するかどうかを明らかにする。さらに、既存の医薬品化合物ライブラリーを用いてネクローシス様細胞死を阻害する化合物のスクリーニングを行い、同定した阻害化合物の医薬品情報からネクローシス様細胞死に重要な細胞内情報伝達経路を絞り込む。この解析とNBDプローブを用いた解析を合わせることで標的分子同定の精度向上を目指す。
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