研究実績の概要 |
これまでの解析から大腸上皮に選択的に発現するB3galt5, St6galnacl6の遺伝子欠損マウスがDSS誘導性腸管炎症に対する感受性が高いことを見出していた。B3galt5, St6galnacl6は、ともにDi-sialyl Lewis A糖鎖構造の生成に関わる糖転移酵素であることから、大腸組織の免疫染色によりDi-sialyl Lewis Aの発現を解析した。その結果、Di-sialyl Lewis Aは、大腸の肛門側にのみ発発現すること、発現する部位ではMuc2と共染色されることが明らかになった。すなわちMuc2の糖鎖修飾は、同じ大腸でも口側と肛門側で異なることが示された。そして、B3galt5, St6galnacl6の各遺伝子欠損マウスでは、Di-sialyl Lewis Aの発現が消失することを見出した。さらに、細菌特異的なプローブを用いたFISH法を組み合わせて解析した結果、B3galt5, St6galnacl6の各遺伝子欠損マウスの大腸肛門側では、粘液層が非薄化していることが明らかになった。また、粘膜固有層の免疫細胞を解析すると、B3galt5, St6galnacl6の各遺伝子欠損マウスでは好中球の浸潤が増加していることが示された。さらに、B3galt5, St6galnacl6の各遺伝子欠損マウスの大腸上皮では、炎症関連遺伝子の発現が亢進していた。これらの結果から、Di-sialyl Lewis Aの糖鎖構造が、腸内細菌依存的な腸管炎症を抑制するために重要であることが示唆された。 B3galt5, St6galnacl6と合わせ、B3gnt7も大腸上皮に高発現する糖転移酵素であることから、B3gnt7の遺伝子欠損マウスも作成し解析した。その結果、B3gnt7欠損マウスがDSS誘導性腸管炎症に対して感受性が高くなることが明らかになった。
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