研究課題
昨年度までに、B3galt5とSt6galnac6という二つの糖転移酵素を介したMuc2糖鎖のシアリル化の腸管バリア機能における重要性を明らかにした。今年度は、腸管上皮に強く発現するGal3St1/2, Chst4の機能を解析した。Gal3St1/2, Chst4は、どれも糖鎖に硫酸基を付加する(Gal3St1/2は、galactose, Chst4はN-acetylglucosamineに硫酸基を付加する)酵素である。Gal3St2, Chst4は腸管上皮に特異的に発現するため、全身の遺伝子欠損マウスを、Gal3St1は他の組織にも発現するため、Villin-creマウスを用いて腸管上皮特異的遺伝子欠損マウスを作成して解析を行った。Chst4は大腸の口側に、Gal3St2は大腸の肛門側に強く発現している。腸管腔をまとめて固定した腸管の組織切片を硫酸基を染色することのできるpH1.0下でのalcian blue染色あるいはpH2.5下でのiron diamine-alcian blue染色法による解析や粘液層を単離しMALDI-TOF MS解析を行った。その結果、Chst4欠損マウスでは、大腸口側でムチン層の硫酸基付加が激減していた。Gal3St2欠損マウスでは、大腸肛門側でムチン層の硫酸基付加が激減していた。また、Muc2に対する抗体を用いた免疫染色解析で、Gal3St2欠損マウスの大腸肛門側のムチン層が希薄化していた。以上の結果から、糖鎖への硫酸基付加が、粘液層のバリア機能に関わっている可能性が示唆される。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖のシアル化の意義については、研究成果を報告し、糖鎖の硫酸基付加の意義解析に移ることができている。
Chst4欠損マウス、Gal3St2欠損マウス、腸管上皮特異的Gal3St1欠損マウスで、腸内細菌叢の変化、腸内細菌の腸管組織への侵入、腸管炎症への感受性を解析していき、糖鎖への硫酸基付加の腸管恒常性維持における役割を明らかにしていく。
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