研究課題
本研究は、我々が構築してきたin vivo網羅的遺伝子機能解析システム、細胞・時期特異的な老化誘導システム・老化細胞可視化システム、時空間的シングルセル解析技術、マルチオミックス解析の技術を応用して、(1)心筋細胞においてDNA損傷が生じる機序、(2)DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序、(3)老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋リプログラミングによる健常化の機序、(4)心不全患者における老化・不全化心筋の病的意義、について我々が独自に開発してきた網羅的in vivo遺伝子機能解析・細胞特異的老化誘導・少数細胞エピゲノム解析・時空間的シングルセル解析を駆使して解明するものである。Step 1. 心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解明:CRISPR/Cas9とシングルセルRNA-seq解析を統合して我々が構築してきたin vivo Perturb-seqシステムを用いて、心筋細胞でDNA損傷が生じる機序を網羅的に解明する。Step 2. DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序の解明:シングルセルRNA-seqおよびエピゲノム解析により老化によるエピゲノム変化を捉える。さらに、超解像顕微鏡を用いて老化で生じる核内エピゲノム挙動の変化を理解する。Step 3. 老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋健常化リプログラミング機序の解明:圧負荷心不全・心筋梗塞後心不全・p53誘導性老化に加えて、老齢マウスモデルを用いて、老化心筋がいかに周囲の細胞や微小環境に影響を与えているかを時空間的に解明する。Step 4. 心不全患者における老化・不全化心筋の病的意義の解明:心筋DNA損傷の発生機序・老化心筋の誘導機序・老化心筋による心不全発症機序がヒト心不全患者において認められるかを、マルチオミックス解析によって検証する。
1: 当初の計画以上に進展している
研究開始から当初の計画以上の成果が得られており、2022年度には複数の論文成果が期待されるため。
Step 1. 心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解明:計画通りの手法によってDNA損傷に関連する遺伝子を網羅的に同定し、シングルセルRNA-seqにより分子機序を解析する。in vivo Perturb-seqをヒトiPS心筋細胞でも確立して、心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解析をヒトiPS由来心筋細胞においても同時に解析して、マウスで得られた知見と比較検討していく。Step 2. DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序の解明:DNA損傷修復・エピゲノム・転写制御の関係性を明らかにする。また我々は、心筋細胞だけでなく内皮細胞や免疫細胞の老化も見出すことに成功している。心筋細胞だけでなく、これらの内皮細胞や免疫細胞における細胞老化がどのように臓器の構築や機能に影響するかを詳細に理解していく。Step 3. 老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋健常化リプログラミング機序の解明:心筋健常化リプログラミングにおけるエピゲノム変化を詳細に理解することを目指す。そして、これが心筋細胞の細胞内構造にいかに寄与しているかについて構造生物学的な解析を進める。さらに、空間的シングルセル解析技術を高めることで、老化・不全化心筋と周囲の細胞との関係性の詳細な理解を深める。Step 4. 心不全患者における老化・不全化心筋の病的意義の解明:シングルセル解析の大規模化を進め、空間的シングルセル解析によって個々の心不全病態を層別化するような空間的バイオマーカーの同定を試みる。さらにゲノム解析と組み合わせることによって、遺伝要因がいかに環境要因とオーバーラップすることによって老化・不全化心筋が生じるかの分子機序の解明に迫る。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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