研究課題/領域番号 |
21H05046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高柳 広 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (20334229)
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研究分担者 |
新田 剛 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (30373343)
岡本 一男 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00436643)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 骨免疫学 / 免疫 / 骨代謝 / 多臓器連関 / がん / 胸腺 / 免疫寛容 |
研究実績の概要 |
本課題では、個体発生から老化に至る骨免疫系を枢軸にした生命機能の制御ネットワーク (オステオイムノネットワーク)を理解し、その恒常性維持と病理的関連性を明らかにする。 ①オステオイムノシステムの発生と維持の分子機構の全容解明: 破骨細胞や骨芽細胞、間葉系幹細胞など、骨を構成する多種多様の細胞集団に対し、細胞分化や細胞間相互作用に関連する分子機構の解析に取り組んだ。また既報のシングルセルRNA-seqデータを元に、胸腺を構成する全ストロマ細胞の遺伝子発現プロファイル、分子マーカーを纏め上げ、新たなストロマ細胞集団の分類に成功した(Nitta et al, Immunol Rev 2021)。 ②オステオイムノパソロジーに基づく骨免疫疾患の病態解明と疾患制御: 骨と免疫の双方が絡む疾患として、特に関節リウマチなどの関節炎、炎症と骨異常を伴う希少性疾患の病態解析に取り組んだ。またLTβR-Sox4シグナル経路が胸腺タフト細胞の分化に必須であることを見出し、新たな中枢性自己寛容の制御機構を明らかにした(Mino et al, Int Immunol 2022)。 ③骨免疫系を基盤とした腫瘍学 (オステオイムノオンコロジー)の創成: がんの骨転移、肺転移などのマウスモデルの解析を通じて、腫瘍や転移による骨および免疫系の機能的変容を明らかにし、がん細胞増殖抑制や抗腫瘍免疫応答の増強に繋がる骨免疫系に関連する制御分子の探索に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①胸腺の上皮細胞、線維芽細胞に関するこれまでの研究実績に加え、今年度は胸腺タフト細胞の新規制御機構を明らかにし、さらに既報のシングルセルRNA-seqデータから全胸腺ストロマ細胞の機能分類にも成功したことで、胸腺ストロマ細胞の包括的研究を可能とする解析プラットフォームが構築できた。また破骨細胞や骨芽細胞、間葉系幹細胞の分化制御、細胞間相互作用に関する解析も順調に進められており、骨免疫系を担う細胞間ネットワークの全貌解明に取り組んでいる。 ②関節リウマチなどの関節炎や、骨異常を伴う希少性疾患のマウスモデルの解析から、病態を規定する病原性免疫細胞および間葉系細胞の候補集団を特定できており、引き続きその病理学的関与と細胞制御機序の解析を進めることで、新たな病態理解と治療戦略の開発に結びつける。 ③がんの骨転移、肺転移などのマウスモデルのシングルセル解析から、各転移巣における免疫細胞集団の網羅的解析が順調に進められており、今後腫瘍進展や抗腫瘍免疫応答に関わる免疫細胞/因子の探索・同定に繋げていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
①オステオイムノシステムの発生と維持の分子機構の全容解明: 骨髄構成細胞として、破骨細胞や骨芽細胞などの骨代謝細胞のほか、骨格形成に関わる間葉系幹細胞にも着目し、細胞間相互作用に基づいた骨形成機構の解明に取り組む。また、胸腺・リンパ節などの免疫組織を構築するストロマ細胞にも焦点を当て解析を進める。 ②オステオイムノパソロジーに基づく骨免疫疾患の病態解明と疾患制御: 骨免疫疾患のマウスモデルの解析を通じて、各疾患の病態を規定する新たな病原性免疫細胞、病原性間葉系細胞を同定し、その分子制御機構を明らかにすることで、新たな治療開発基盤に繋げる。 ③骨免疫系を基盤とした腫瘍学 (オステオイムノオンコロジー)の創成: マウスのがん転移モデルの解析から、腫瘍進展や転移に伴い生じる骨髄環境破綻および免疫細胞分化・機能の変化を分子レベルで明らかにし、骨免疫系の制御破綻と、がん微小環境の形成および抗腫瘍免疫応答との関連性を調査する。
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