研究課題/領域番号 |
21H05051
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
片岡 圭亮 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90631383)
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研究分担者 |
木暮 泰寛 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40782389)
冨樫 庸介 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80758326)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / CRISPRスクリーニング / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
悪性リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)や、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、節外性NK/T細胞リンパ腫(ENKTL)などを含む不均一な疾患である。近年、リンパ腫においても遺伝子異常の全体像が解明され、様々な新規異常が同定されてきた。しかし、多くの異常の生物学的意義、特に、その分子機構や生体内でリンパ腫発症に果たす役割、微小環境に与える変化は不明のままである。本研究では、申請者が同定した異常を中心に、リンパ腫で認められる遺伝子異常の詳細な分子機構・生体内における役割・微小環境に与える変化を解明するために、A.申請者の遺伝子解析研究で同定された異常の分子機能の解明・疾患動物モデルの解析、B.生体内CRISPRスクリーニングによるリンパ腫発症に寄与する遺伝子異常の高効率な検証、C. CRISPR制御部位スクリーニングによるB細胞リンパ腫特異的PD-L2発現制御機構の解明、D.単一細胞マルチオミクス解析のマウスリンパ腫モデルへの応用とリンパ腫微小環境の解明、E.ヒト検体由来の網羅的遺伝子解析データを用いた臨床応用の可能性の探索、を実施した。 本年度は、項目Aでは、ATLでアイソフォーム特異的に変異が認められるCICのアイソフォーム特異的欠失マウスの構築・解析を行い、CIC-L欠失により、ATLの起源細胞である制御性T細胞が増加することを明らかにした(Y Kogure, 2022 Blood)。項目Bでは、DLBCLで認められる異常も対象として生体内CRISPRスクリーニングを実施し、様々な造血器腫瘍の発症・進展に関与する遺伝子を同定した。項目Cでは、PD-L2発現制御に関わる転写因子をCRISPRスクリーニングにより探索した結果、7個の転写抑制因子および2個の転写促進因子を同定した。項目Dでは、単一細胞マルチオミクス解析のマウスモデルへの応用を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究も目的を遂行するために計画したA~Eの項目について、当初予定よりも早く進捗している。それらの結果、CICのアイソフォーム特異的欠失による制御性T細胞の増加や、PD-L2発現制御に関わる転写因子など様々な新規の事実が見出されている。さらに、前者に関しては、今年度Blood誌に報告することができた。そのため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定以上に順調に進展しているため、現在の方針を引き続き継続して研究計画を実施する。翌年度は、項目Aでは、PD-L1 3′-UTR欠失とLMP1/LMP2又はHBZを発現するマウスを掛け合わせた動物モデルの構築・解析を実施する。項目Bでは、同定された遺伝子機能の確認を行うと同時に、得られた腫瘍細胞を用いて、全エクソン解析による二次的異常の検索や、RNAシーケンスによる遺伝子発現プロファイルの評価、薬剤スクリーニング等を行い、遺伝子異常ごとの分子病態や薬剤感受性の違いを解明する。項目Cでは、細胞株に同定された制御因子の過剰発現またはノックアウトを導入し、リアルタイムPCRで既知または新規いずれのPD-L2トランスクリプトの発現制御に関わるか検証する。さらに、ChIP-qPCRやルシフェラーゼアッセイにより、同定された制御因子が直接発現制御に関与するか調べる。項目Dでは、単一細胞マルチオミクス解析技術を用いることにより、PD-L1又はPD-L2を遺伝子導入したB細胞リンパ腫マウス細胞株移植モデルの免疫微小環境の変化を網羅的に解明する。項目Eでは、項目Cに関連して、同定された転写抑制因子・転写促進因子が実際にPD-L2発現と相関するか、さらに、PD-L2の既知または新規トランスクリプトで発現相関に違いがあるかを検証する。
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