研究課題/領域番号 |
21H05055
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高西 淳夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50179462)
|
研究分担者 |
石井 裕之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10398927)
橋本 健二 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (10449340)
川上 泰雄 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60234027)
大谷 拓也 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (70777987)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
|
キーワード | ロボティクス / ヒューマノイド / 関節弾性 / 脱力 / スポーツ科学 |
研究実績の概要 |
低エネルギー消費運動生成法については、計画通り、運動生成法の開発とシミュレーションによる検証などを進めた。ロボットの身体各部のエネルギーを算出し、身体各部エネルギー式をこれまでに開発していた運動量制御法に加えることで、ロボット全体の安定性も考慮しながら低エネルギー消費運動を生成できることを確認した。 脱力も可能な関節機構開発については計画通り、理論検証のための関節機構を開発しその性能を検証した。従来の機構では、クラッチ機構や高トルクを伝達可能なツースクラッチを用いてアクチュエータからの動力を遮断し脱力を実現するものが多いが、高トルク発揮と両立するには強度を維持するため高重量になっていた。そこで、機械的接続を引き抜く方式とした。 関節軸から伸びたビームをリンクフレームとソレノイドの先端についたベアリングで挟むことで固定し、アクチュエータから関節軸へ、関節軸からリンクフレームへと動力伝達を可能にしている。 動力伝達機構・人間規範軽量四肢構造として、動力伝達機構を開発し、これを搭載した人型ロボット脚部を開発した。関節を跨ぎアクチュエータ動力を伝達するリンク機構と、跨いだ関節の回転と連動してアクチュエータ自身を回転させることで跨いだ関節の回転の影響を相殺するリンク機構を組み合わせている。これにより、開発した脚機構を用いた検証実験では、足首部を駆動するアクチュエータを大腿部に搭載し、膝関節を跨いで足首を駆動すること、膝関節を回転させた場合にも足首部は影響されず回転しない非干渉駆動が可能となった。 スポ ーツフォームの違いによるエネルギー効率への影響検証については 、 跳躍運動や投球運動を対象に人体運動計測実験を進め 、 ロボット開発に用いるための運動データを収集した。これらのデータを元に、開発したエネルギー最適運動生成手法を人間の身体パラメータに適用する検討を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画として,本研究の新規性を構成する主要な理論・ロボット機構について2年で開発・検証を行う計画であった.研究の進捗は概ね順調であり,主要な研究課題についてそれぞれ研究の根幹となる開発や理論検証を達成することが出来た. 低エネルギー消費運動生成法の開発では,ロボットの運動時の各瞬間において身体各部が持つ各力学的エネルギーを算出し,これらを元に運動の最適化計算および動力学計算を行うことで,ロボットが実行可能な範囲を広く検討し,ロボットに最適な低エネルギー消費運動生成が可能であることを確認した. 能動・弾性・脱力可能な関節機構の開発では計画通り,軽量な関節機構を実際に製作し,これまでに達成できていなかった脱力動作も可能となった. 動力伝達・非干渉機構による軽量四肢機構の開発では,関節を跨いで動力伝達を行うための非干渉リンク機構を開発し,試作したロボット脚部による実験にて,膝の回転によらず大腿から足首に動力を伝達できることを確認した. 低エネルギー消費運動生成を応用した人間の高パフォーマンス動作提案では,上記の各研究に貢献する人間の運動データを取得し解析をするとともに,低エネルギー消費運動生成法を人間の運動生成に用いることが可能かを検討する計画であった.まず,活動・脱力を含む筋活動の詳細な解析を行い,跳躍時や投球時のパフォーマンスに対する各筋の力発揮タイミングの影響などを検証した. 新型コロナウイルス感染症の広がりなどの影響により,実験装置・試作機製作に必要な製作部品の材料調達,加工の納期が例年よりも遥かに長くなってしまった.しかし,ロボットの事前検証に用意しているロボット計算シミュレータを用いて実験の準備・事前検証を進められたことで,最終的な実験計画には大きな影響は無い.このため,順調に研究が進展しており,期待通りの成果が見込めると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
低エネルギー消費運動生成法については,提案手法の有効性検証を進める.投球動作を対象に人間が行うように肘を脱力させて高速な腕振りを行うため,提案手法にて肘の脱力を指定して活用する運動生成を行うことで,肘の脱力を活用するため腰や肩で運動エネルギーを生み出し肘まで伝達して肘の振り出しを行う投球動作生成をシミュレーションにて確認する. 能動・弾性・脱力可能な関節機構の開発では,開発した機構を用いて能動・弾性・脱力動作を組み合わせた投球動作実験を進める. 動力伝達機構・人間規範軽量四肢構造の開発としては,製作した脚の駆動実験を進める.また,エネルギー効率向上のためにはロボットの軽量化設計技術は重要であるため,設計改良による軽量化を進めるとともに,高機能性樹脂など新しい素材の活用を検討する. 低エネルギー消費運動生成を応用した人間の高パフォーマンス動作提案では,引き続き,各研究に貢献する人間の運動データを取得し解析をするとともに,低エネルギー消費運動生成法を人間の運動生成に用いることが可能かを検討する.具体的には,活動・脱力を含む筋活動の詳細な解析を行い,跳躍時や投球時のパフォーマンスに対する各筋の力発揮タイミングの影響などを検証する.また,これらのデータを元に,開発したエネルギー最適運動生成手法を人間の身体パラメータに適用することの検討を進める.さらに,研究参加者の活動プラットフォームとして,日本科学未来館研究エリア内に共同研究拠点を構築する.このことによって研究の遂行やアウトリーチが加速され,人型ロボットや人間の運動能力の詳細計測に関して,一般社会との科学コミュニケーション活動も展開可能となる.
|