昨年度に引き続き、デジタルプラットフォームを想定し、消費者探索理論の枠組みを用いて、消費者の探索行動と競争政策に関する分析を行った。具体的には、以下2つの研究に取り組んだ。
1.他社製品に加えて自社製品を扱う二刀流プラットフォームが、自社製品を目立たせる(例:ランキングでの上部配置)ような自己優遇行為を取った際の厚生に与える特性を分析し、政策効果を検討した。その結果、自己優遇行為の厚生への影響と政策効果は手数料率に依存することを示した。具体的に、垂直分離政策は常に価格の低下を通じて厚生を改善できるが、自己優遇を禁止するだけの政策は、手数料率が高い場合、かえって厚生を損なう可能性があることを示した。 2. 情報探索に関わる探索デザインの違いが消費者行動に与える影響を引き続き分析した。具体的に、既存の探索実験デザインを意思決定への関与度合いに応じて受動・準能動・能動の3つに分類し、デザイン間で消費者行動に差があるかどうかを、実験を通じて検証した。結果、意思決定への関与度合いが低い探索デザインほど、消費者は探索行動をより早く打ち切ること、受動的な探索デザインでは、リスク回避的な消費者ほどより早く探索を打ち切ることを示した。
これら以外に、プラットフォームによる自己優遇に関する日本語レビュー論文を執筆・公開し(CPDP-89-2-J)、それを英訳したものが国際査読誌に掲載された。また、既存論文の改訂作業を実施するほか、デジタルプラットフォームを想定した消費者および企業行動に関する3本の共同研究に参加した。
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