研究課題/領域番号 |
21J00015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
世良 透 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 間欠力学系 / エルゴード理論 / 分布極限定理 / 作用素更新理論 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きJ. Aaronson氏(テルアビブ大学)と共同研究を進め,以下の結果を得た:間欠力学系などの無限測度保存エルゴード変換に対しある種のピン留め条件を課し,そのときの有限測度集合への滞在時間に関する分布極限定理を得た.先行研究としてピン留め条件を課さない場合の極限分布がミッタク=レフラー分布であることはよく知られているが,本研究によりピン留め条件を課した場合は極限分布としてミッタク=レフラー分布を変形したものが現れることが分かった.この結果を得るために作用素更新理論における局所極限定理などを応用した.このことは昨年度に学術雑誌「Israel Journal of Mathematics」に投稿したが,今年度はその査読や修正の過程を経て受理された. さらにこの結果を関数型極限定理へと拡張するため,J. Aaronson氏と共同で新たな論文投稿の準備を進めている.この拡張において,極限過程としてピン留めベッセル拡散過程の局所時間が現れると考えられる.また同じくピン留め条件を課したときの無限測度集合への滞在時間に関する分布極限定理についてもJ. Aaronson氏と共同研究を進めている.これらの研究では,作用素更新理論における局所極限定理・大偏差評価を適切に精密化・応用することが重要になる.さらにそのためには,再帰写像のペロンフロベニウス作用素がスペクトルギャップを持つことに着目し,ペロンフロベニウス作用素を摂動させたときの最大固有値の挙動などを解析することが重要である. 加えて,これらの研究成果を研究集会「エルゴード理論とその周辺」や「冬の力学系研究集会」などで発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,J. Aaronson氏との共同研究によって,ピン留め条件下の間欠力学系のさまざまな分布極限定理が得られつつある.またそれらの分布極限定理の導出のために,作用素更新理論における局所極限定理・大偏差評価の精密化も着実に研究が進んでいる.したがって当初の計画通り研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きJ. Aaronson氏と共同でピン留め条件下の間欠力学系の有限測度集合への滞在時間過程を考察し,その関数型極限定理を完成させることを目指す.また無限測度集合つまり中立不動点近傍への滞在時間を考察し,その分布極限定理や関数型極限定理を得ることを目指す.さらにこれらの研究を応用して,ピン留め条件を課さない場合の既存の分布極限定理について,その収束スピードを評価することを目指す.
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