昨年度に引き続きJon. Aaronson名誉教授(Tel Aviv大学)と以下の共同研究を行った:間欠力学系などの無限測度保存エルゴード変換に対しある種のピン留め条件を課すことを考える.そのときの有限測度集合への滞在時間過程に関する関数型の分布極限定理を得た.極限過程としてミッターク・レフラー過程に適当なランダムなスケーリングを施したものが現れることが分かった.なお先行研究により,このミッターク・レフラー過程はピン留め条件を課さない場合の極限過程であることが知られている.証明のために,作用素更新理論における局所極限定理や強更新定理など様々な評価を利用した.以上の研究結果を学術雑誌に投稿し,現在査読中である.
またピン留め条件を課したときの無限測度集合への滞在時間に関する分布極限定理,いわゆる一般化一様法則についてもJon. Aaronson名誉教授と共同研究を進めており,現在投稿準備中である.一般化一様法則は元々ピン留め1次元拡散過程の極限定理として知られているものだが,研究代表者のこれまでの研究を踏まえると,間欠力学系を含むような無限測度保存エルゴード変換に対しても同様のことが成り立つと予想できる.しかし1次元拡散過程の場合の証明で用いられたファインマン・カッツ公式などは,無限測度保存エルゴード変換では用いることができない.そこで代わりに作用素更新理論における局所極限定理や大偏差評価を用いて所望の極限定理を得ることを目指している.
以上の結果を研究集会「力学系の理論と諸分野への応用」などで発表した.
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