2021年の1月頃から渡米の準備を進めていたが、受入研究機関のコロナ感染症に対する方針を遵守したので、渡米できなかった。コロナ禍の影響で渡米の予定を立てることもできなかった。したがって、本研究において肝要な電気合成化学の修学および取り組みに至らなかった。しかし、本研究は創薬を指向した有用有機化合物の短工程合成という側面を有しているので、さまざまな有用化合物の効率的合成に取り組んだ。有用化合物合成中間体である化合物の効率合成に取り組んだ。アルデヒドを還元し、アルコールへと収率85%で変換した。得られたベンジルアルコール誘導体に対してPBr3を作用させることでブロモ体を得た。その後、亜硝酸銀を作用させることで目的のニトロ化合物を得た。しかし、3工程の収率は17%と満足できるものではなかった。副生物を単離したところ、亜硝酸エステル化合物が生じていることが判明した。これは求核置換反応にて目的の窒素原子からの付加ではなく、酸素原子からの付加が進行したことを意味する。溶媒や温度等の検討を行なったが、亜硝酸エステル化合物の副生を抑制することができなかった。そこで、合成ルートを見直すことにした。具体的にはアルデヒドをオキシムにしたのちに酸化反応を行うことで、目的のニトロ化合物が得られると考えた。実際に行なってみると、目的のニトロ化合物を2工程の収率65%で得た。この収率向上は有用化合物の合成に大きく貢献すると考えている。
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