本年度は、グラフェンナノリボンのエッジクロロ化の検討とエッジクロロ化されたグラフェンナノリボンの原子分解能構造解析に加えて、共有結合性有機構造体(COF)の構造解析に取り組んだ。 具体的な成果としては、グラフェンナノリボンの電子顕微鏡観察について、昨年度達成したカーボンナノチューブへの担持による孤立したグラフェンナノリボンの観察には炭素原子が電子顕微鏡像上で強いコントラストを持たないため、詳細な構造解析が困難であるという問題があった。その問題を解決するべく、一部のナノグラフェンにおいて報告がされていたエッジに存在する水素をクロロ基に置換する反応に注目し、非平面のねじれ構造を持つフィヨルドエッジ型グラフェンナノリボンに対して検討を行った。フィヨルドエッジ型の構造に対してはこれまで報告がなかったが、反応条件検討の結果、非平面性を引き起こす[5]ヘリセン部位を維持したままクロロ化を進行させることができた。このようにして得られたクロロ化グラフェンナノリボンは十分なコントラストを持った電子顕微鏡像を与え、シミュレーションによる解析の結果、非平面構造を引き起こす各ヘリセン部位のキラリティについても推定することができた。このように非平面グラフェンナノリボンの原子分解能構造解析を世界で初めて達成することができた. COFに関して、電子顕微鏡観察によりそのハニカム周期性を持つ二次元シート構造とその積層構造を確認することができた。
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