本研究は抗原提示下のT細胞を顕微鏡観察下で高速に単離し、発現する遺伝子を網羅的に解析するイメージング1細胞遺伝子発現解析技術を開発することにより、抗体産生応答および抗ウイルス応答の実態描出に資するT細胞の時空間的活性化メカニズムを明らかとすることを目的とする。 免疫で主要な役割を果たすT細胞は一様に抗原提示されて一様に活性化する訳ではなく、接触回数・接触時間などの抗原提示条件には大きなばらつきが存在し、活性化に伴う遺伝子発現にも質的に大きなばらつきを伴う。本研究では、イメージング1細胞遺伝子解析技術を開発することにより、時空間的にT細胞が活性化に至るまでのメカニズムを解明する。また、独自の組織切片培養法を確立し、1細胞単離技術を発展させ、生体内におけるT細胞の時空間的活性化の描出とその生理的意義を解明する。さらに、これらの現象にPD-1をはじめとした抑制性免疫補助受容体が与える影響を解析する。 初年度はT細胞培養刺激実験系の構築を試みた。蛍光タンパク質が導入されたT細胞と抗原提示細胞の発色を指標とし、迅速かつ正確に両細胞を区別して単離する方法の開発を試みた。抗原提示細胞と接触した時間および接触回数を観察すると同時にT細胞を単離することを試みた。接触回数をどれくらいの数の細胞について、どれくらいの期間にわたって、何回くらいまで、どれくらい正確にカウントできるのか、本当に活性化するT細胞は複数回の接触を経て活性化しているのか、単離作業が単離対象としていない細胞の接触回数や活性化に影響を与えないか等の確認を行いながら、イメージング1細胞遺伝子解析技術の開発と操作技術の向上に努めた。
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