研究課題/領域番号 |
21J01626
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
滝本 祐也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 膜ファウリング / バイオフィルム形成細菌 / バクテリオファージ |
研究実績の概要 |
膜分離活性汚泥法(MBR)は高い廃水処理性能を有しているが、膜ファウリングの発生による膜透過性能の低下が主要な問題である。本研究では、膜ファウリングの原因である膜面のバイオフィルム形成細菌を分離培養することで、それらを特異的に死滅させるバクテリオファージを獲得し、新規の膜ファウリング制御方法を開発することを目的とする。膜面のバイオフィルム形成は、活性汚泥上清に存在する溶存有機物がごく初期に付着し、それらに特定の細菌群が付着することで進行し深刻化する。これまで、MBRの膜面バイオフィルムの16S rRNA遺伝子に基づく解析から、MBR活性汚泥中にはマイノリティであるにもかかわらず、バイオフィルム中に特異的に増加する細菌が存在することが明らかとなってきた。一方で、それら細菌については分離培養できておらず、その生理生態は不明であった。そこでまず、本研究では、MBRの活性汚泥上清に存在する100 kDa以上および300 kDa以上の溶存高分子有機物(膜ファウリングの原因物質)を培養基質として用いて、バイオフィルム中に存在しかつ、高いバイオフィルム形成能を有する細菌の可培養化を目指し、それらのバイオフィルム中での生態学的役割および膜ファウリングへの影響を明らかにする。さらに、分離したバイオフィルム形成細菌を特異的に死滅させるファージをさまざまな環境から単離し、これらのファージを利用することで膜ファウリング制御システムの開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、活性汚泥上清に存在する100 kDa以上および300 kDa以上の高分子有機物を濃縮する方法を確立し、培養基質として用いた培養を実施した。バイオフィルムを植種源として用いた培養によって、バイオフィルムに特異的に増加する細菌の獲得に成功した。特にProteobacteriaおよびActinobacteteia門に属するバイオフィルムに存在する広範な細菌や新規の細菌を培養することができた。現在はこれらのバイオフィルム形成能を評価している。一方で、バイオフィルムの最優占種の培養には至っておらず、今後も継続して培養を実施する必要がある。以上より、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、バイオフィルム形成細菌の培養を引き続き実施するとともに、ゲノム解析等によるバイオフィルム形成細菌の共通因子を探索する。さらに、特にバイオフィルム形成能の高い細菌を宿主として用いてさまざまな環境(例えば活性汚泥上清や都市下水、湖など)から採取したサンプルを用いたプラークアッセイを実施して、バイオフィルム形成細菌を特異的に死滅させるファージを単離する。
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