研究課題
HfxZr1-xO2膜を強誘電体膜として用いた次世代強誘電体デバイスの実用化に向けて、今年度は分極反転回数の増加に伴い残留分極値が減少する分極疲労メカニズムの解明に取り組んだ。これまで、HfxZr1-xO2膜を用いた強誘電体デバイスは、分極反転回数の増加に伴いHfxZr1-xO2膜へ新たな酸素欠損が形成され、これら酸素欠損により分極ドメインがピン止めされることで分極疲労が生じると考えられていた。しかし、これら分極疲労に寄与する新たな酸素欠損の生成起源に関して実験的に明らかにした例はなかった。そこで、異なる分極反転サイクルを印加したTiN/HfxZr1-xO2/TiNキャパシタのHfxZr1-xO2/TiN界面での反応に着目して、放射光X線を用いた硬X線光電子分光法(HAXPES)によりHfxZr1-xO2/TiN下部電極界面の化学結合状態を評価することで酸素欠損の生成起源を調べた。その結果、分極疲労時にHfxZr1-xO2膜からTiN下部電極側へ酸素が供給されたことでHfxZr1-xO2/TiN下部電極界面に酸素リッチなTiOxNy層が形成されていることが分かった。一方、HfxZr1-xO2膜ではTiOxNy層の形成に伴いドメインのピン止め効果に寄与する酸素欠損が増加したために、結果として分極疲労が生じたと考えられる。以上より、HfxZr1-xO2膜の分極疲労を抑制するためにはHfxZr1-xO2膜と電極界面における酸素の動きを制御することが重要であることが示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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APL Materials
巻: 10 ページ: 051110~051110
10.1063/5.0091661