研究課題
本研究は、治療用遺伝子を脳内へ送達し、発現させるためのLNP開発を目指し、①DNAバーコードを用いた体内動態評価系の確立と、②転写・翻訳過程に着目した遺伝子発現差のメカニズム解析を行った。①、②それぞれについて下記の結果を得た。①;LNPのin vivoスクリーニングを効率化するため、DNAバーコードを用いたLNPのラベル化と次世代シーケンスを用いた評価系を作成した。本研究では、プラスミドDNAにバーコード配列を組み込み、RNAバーコードとして発現させることで、遺伝子の移行と転写までの発現を同時に測定可能な評価系を確立した。本評価系を用い、30種類のLNPの体内動態を評価したが、現時点で脳へ効率的に(投与量の1%以上)送達可能なLNPは見出されていない。一方で、移行と発現の組織選択性に関して、pDNA移行量、mRNA発現量、タンパク質発現量の相関が低く、特に、タンパク質発現量で大きな差が見られ、翻訳過程に大きな差が生じている可能性が示唆された(以下の②の結果を支持する)。②;遺伝子発現活性に大きな差が見られたLNPに関して、遺伝子発現量、細胞内・核内DNA量及びmRNA量を定量し、組織移行から核内移行、転写・翻訳といった各過程の効率を比較した。その結果、翻訳過程に100倍以上の差があることが示唆された。発現細胞種を単離し、マイクロアレイによってトランスクリプトーム解析を行った結果、発現量が高い細胞は、発現が低い、もしくはしていない細胞と比較して、RNAプロセシングやリボソーム生合成といった、転写・翻訳に関わるパスウェイが有意に変動していた。今後、脳移行に関してはさらなる物性改良が必要である。発現メカニズムに関しては、単なる動態解析だけでなく、キャリアが細胞にどう認識され、それが遺伝子発現に影響するどのような生物学的プロセスに影響しているのかを検証していく必要がある。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: ー ページ: ー
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