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2021 年度 実績報告書

トポロジカル半金属を用いた高性能純スピン注入源の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21J10066
研究機関東京工業大学

研究代表者

白倉 孝典  東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2023-03-31
キーワードスピンホール効果 / ハーフホイスラー合金 / トポロジカル半金属 / スパッタリング / 磁気メモリ / スピン流
研究実績の概要

本研究の目的は、400℃を超える高い熱耐久性と1を超える巨大スピンホール角を両立可能な高性能純スピン注入源を開発することである。この目的を達成するため、スピンホール効果の強いトポロジカル表面状態を有するハーフホイスラー型トポロジカル半金属の一種であるYPtBiに着目し、その熱耐久性とスピンホール角の評価を行った。
まず、c-Sapphire基板上に同時スパッタリング法を用いてYPtBi薄膜を作製し、XRDを測定した結果、300~600℃という広い範囲でYPtBiの結晶化を確認した。また、XRFによりBi組成を測定した結果、600℃以下において理想組成である1を保つことが明らかとなった。以上のことから、YPtBiが600℃の熱耐久性を有することが分かった。
次に、二次高調波法を用いたスピンホール角測定の結果、最大で4.1という巨大なスピンホール角を得た。さらに、YPtBi単膜のプレーナホール効果およびスピンホール角の膜厚依存性を調査することで、この巨大なスピンホール角がYPtBiのトポロジカル表面状態に起因することが明らかとなった。以上より、量産プロセスで求められる400℃を超える熱耐久性と、トポロジカル表面状態に起因した1を超える巨大スピンホール角を両立するトポロジカル材料の開発に世界で初めて成功したといえる。
さらに、磁気メモリ応用を見据え、CoPtを用いて磁化反転実験を行ったところ、重金属よりも1~2桁小さな電流密度で磁化反転が可能であることが分かり、YPtBiのスピンホール角が巨大であることを裏付ける結果を得た。
これら研究成果により、トポロジカル表面状態の巨大スピンホール角を利用したスピントロニクスデバイスの実用化が加速されることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の目標である、400℃を超える高い熱耐久性と1を超える巨大なスピンホール角を現段階で既に達成するとともに、スピンホール効果の強いトポロジカル表面状態の寄与を実験的に実証することに成功した。
また、計画がいな事例として、スパッタ条件を詳細に調査することにより、YPtBiの組成比や成膜温度、成膜圧力が電気伝導率を介してスピンホール角に大きな影響を与えることを明らかにし、産業応用の際に求められる低温結晶成長においても8という巨大なスピンホール角を得られることが明らかとなった。
さらに、計画にはなかったSiO2上に成膜にしたYPtBiでも1を超える巨大スピンホール角を達成したため、産業界へのさらなる波及効果が望める。

今後の研究の推進方策

現在、基礎研究において当初計画した以上の進捗が得られているため、本年度はより実際のデバイス応用を見据えた研究を行う。具体的には、SiO2上に成膜されたYPtBiの高品質化および、産業界で最もよく用いられるCoFeB強磁性膜とのヘテロ接合の作製である。
SiO2上に成膜したYPtBiでも1を超える巨大スピンホール角を得られたが、結晶性がc-Sapphireに成膜したものよりも劣るため、バルクの正孔密度が上昇し、思うようにスピンホール角が向上しないという問題に直面した。この問題に対して、正孔密度をカウンタードープにより減少させ、スピンホール角を向上させることを考えている。ドーパントとしては、他のハーフホイスラー合金系で実績のあるAuや、同族元素でありより安価なCuを考えている。
また、CoFeBとのヘテロ接合膜では、CoFeBが垂直磁気異方性を有することが重要である。そのため、YPtBiとCoFeBとの間に中間層材料を挿入することによって垂直磁気異方性を誘起することを考えている。具体的には、磁気トンネル接合等で実績のあるTaや、スピン透過率の高いRuやTiを中心に検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Efficient spin current source using a half-Heusler alloy topological semimetal with back end of line compatibility2022

    • 著者名/発表者名
      Shirokura Takanori、Fan Tuo、Khang Nguyen Huynh Duy、Kondo Tsuyoshi、Hai Pham Nam
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1038/s41598-022-06325-1

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2022-12-28  

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