研究課題/領域番号 |
21J10143
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
後藤 崇支 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 根粒共生 / 植物ホルモン / オーキシン |
研究実績の概要 |
「根粒共生におけるオーキシンメチル化の生理機能」の役割解明を目指し、本年度は ①オーキシンメチル化酵素をコードするIAMT1a遺伝子と、その逆反応を担う酵素をコードするMES17遺伝子の分子遺伝学的解析、②質量分析装置(LC/MS-MS)を用いたオーキシンのメチル化産物(MeIAA)の量の測定を行った。①ミヤコグサ毛状根を用いて、IAMT1aの発現をRNAi法により減衰させると根粒の形成が阻害され、反対に過剰発現させると根粒の形成が促進された。MES17を過剰発現させると根粒の形成が阻害された。②IAMT1aを過剰発現させた根ではMeIAA量が増加し、MES17を過剰発現させた根ではMeIAA量が低下した。また、(根粒菌が過剰感染する特徴をもつミヤコグサ共生変異体daphneを用いて)根粒菌感染前後でMeIAA量を測定した結果、根粒菌感染によって根でMeIAA量が有意に増加することを確認した。以上の結果から、根粒菌感染によって誘導されるオーキシンメチル化は根粒形成に必要とされることが示された。本研究を通して得られた成果は、2022年3月2日付けで米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「根粒共生におけるオーキシンメチル化の生理機能」の役割解明を目指し、本年度は分子遺伝学的解析および質量分析を通してオーキシンメチル化が根粒の形成に必要とされることを明らかにした。そして、得られた成果を米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)誌に投稿し、論文は2022年3月2日付けで掲載された。 では、「オーキシンメチル化」はどのように根粒形成に関わっているのか? 今後、下流シグナルを探索することで、この疑問に迫れると考える。オーキシンのメチル化産物であるMeIAAをミヤコグサの根に投与したとき、共生遺伝子であり皮層細胞分裂の鍵遺伝子であるNINの発現が誘導された。この結果は、次年度の研究を推進する上で重要な手掛かりとなると考えられる。 以上の観点から、本研究課題は概ね順調に進展していると結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は「オーキシンメチル化」の下流シグナルの探索に着手する。具体的には、オーキシン(IAA)のメチル化産物(MeIAA)をミヤコグサの根に投与した時に誘導されるシグナルを、RNA-seqにより網羅的に探索する。IAA投与群と比較することで、MeIAAのIAAとの違いを調査する。 また次年度は、根粒共生におけるオーキシンメチル化の機能の進化的起源にも迫るために、表皮感染を介さない共生様式(crack-entry)におけるオーキシンメチル化の機能解析を行う。Lotus burttiiを用いたIAMT1aの分子遺伝学的解析を予定している。
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