不飽和炭化水素の多重結合への水素化は、石油化学、製薬など様々な分野で使用される重要な反応である。現状、この反応には高価かつ少資源量のパラジウム (Pd) 触媒が広く使用されており、代替触媒の研究が行われている。本研究では高い水素解離能力を有するニッケル (Ni) を含んだ水素吸蔵合金に着目し、一連の水素吸蔵合金として代表的な結晶構造を有し、かつ異なる水素化物を形成する水素吸蔵合金 (AB5型 (CaCu5型) 、A2B型 (Mg2Ni型) 、AB2型 (MgCu2型) ) における不飽和炭化水素の水素化特性の調査を行った。RENi5系の水素吸蔵合金では水素吸蔵に伴い触媒活性が向上した。一方で、Mg2Niでは水素化物の形成により触媒活性は低下した。CeNi2では変化はなかった。本研究の結果から、いずれの水素吸蔵合金においても合金内部から吸蔵水素が供給され、触媒反応に使用されることで触媒活性が向上するのではないと考えられる。RENi5-xAlxでは適切なREの選択、Al置換による水素吸蔵量の制御により、電子状態を最適化することでPdに匹敵するような非常に高い触媒活性が実現可能であることが示唆された。さらに、大気酸化を施したアモルファス相のCeNi2Hxの表面は酸素空孔を有するセリア (3価のCe) で構成されていた。大気酸化を施したアモルファス相のCeNi2Hxは酸素空孔を有するセリアを有効に利用できる反応への応用も期待できる。
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