KamLAND におけるsub-GeVニュートリノ反応の測定、特に中性子多重度に焦点を当てた研究、加えてニュートリノ反応モデルパラメータの測定を行った。 まずは大気ニュートリノを測定するにあたり、太陽活動周期がフラックスに与える影響の見積もりが必要であった。そこで、太陽活動の指標として世界各地の宇宙線中性子モニターを利用して、これを見積もった。2003年から2018年の15年間にわたるKamLANDデータセットにおいて、約3%の変動が見込めることがわかった。 これまでに行った研究内容を網羅的に用いて、大気ニュートリノ事象とそれに付随する中性子多重度の測定やシミュレーションによる期待事象の見積もりを行った。幅広いエネルギー領域と中性子多重度において、測定データとシミュレーションの結果がよく一致していることを確認した。ニュートリノ反応シミュレータが、中性子多重度の面でも、反応を良く記述していることが明らかとなった。 本研究ではエネルギースペクトルをフィットすることで、中性カレント準弾性反応の定式化に現れるストレンジ軸性電荷を測定することに成功した。これは中性子多重度を大きく変化させるパラメータであるため、統計の少ないKamLANDデータでも精度よく測定できた。この測定結果をまとめた論文はは、本年度3月にPhysical Review D にて受理されている。
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