昨年度までの研究では、細胞透過性ペプチドを組成に含むペプチド/ポリマーナノミセル(ナノ粒子)を開発し、このナノ粒子が鼻から脊髄への薬物移行性を最大限に向上させることを定量的に明らかとした。令和4年度では、N-アセチル-L-システイン(NAC)を搭載したナノ粒子の経鼻投与が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病勢進展に対して抑制を示す有用な薬物送達法になるかを明らかとするため、ALSの動物モデルである変異型SOD1(G93A)導入マウス(G93Aマウス)の生存期間について検討した。 初めに、ナノ粒子とNACを混合することで、NAC搭載ナノ粒子を調製した。NAC搭載ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、中性電荷を示し、NACの一部がナノ粒子表面に搭載されたことが示唆された。 次に、NAC搭載ナノ粒子をG93Aマウスに対して繰り返し経鼻投与した結果、NAC搭載ナノ粒子群の生存期間中央値は137.5日であり、未処置群(126.0日)と比較して生存期間を11.5日間、有意に延長した。NAC単独群の生存期間中央値(133.5日)は、未処置群と比較して、有意な差は認められなかった。このことから、NACを表面に搭載したナノ粒子の繰り返し経鼻投与は、G93Aマウスの生存期間を延長できる有用な薬物送達法であることを明らかにした。
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