研究課題/領域番号 |
21J10189
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三河 祐梨 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
キーワード | ガルバノミラー / 広域遠方空中像 / レーザ / ステアリングミラー / 拡張現実 |
研究実績の概要 |
本研究課題であるミラーアレイ制御による広域遠方空中像提示の実現に向け、(1)ミラーの高速走査による映像提示のシミュレーションを用いた検討 および(2)本提案システムを実際に構築する第一歩として、1個の2軸ガルバノミラーとレーザを用いた、遠方ユーザへの1点の空中像提示のシステムの構築 を行った。 (1) 1個のミラーに1個のレーザを対応させるユニットを複数個配置しても、全体では目の粗い映像になることを懸念し、まずガルバノミラーの光軸数を増やし、常にユーザの瞳孔に入射しながら高速走査により密な映像提示を行う仕組みを、シミュレーションを用いて検討した。この過程で、ガルバノミラーは高速走査のメリットがある一方で、2軸でもおよそ30個の校正パラメータを有し、光軸数が増えるほどより扱いが難しくなることが判明した。対して、光軸が2次元的に変化するステアリングミラー等は校正パラメータ数が少ないものの、速度に欠けることから、ミラーを用いた密な映像提示は現実的でないことが判明した。 (2) 本システムの構築の第一歩として、単一の2軸ガルバノミラーと1個のレーザを用いることで、ユーザの目に常に入射する1点の空中像提示システムを開発した。ユーザの目の三次元位置を計測し、そこに入射するようなガルバノミラーの角度を決定するにあたって、本問題は線形に解けず、反復最適化あるいは近似によって解が求まるが、そこでは速度と精度のトレードオフが生じることが分かった。本報告はSICE Annual Conference 2021でYoung Author’s Awardを受賞した。 現在は、ミラー制御より扱いの容易で、かつ各コンポーネントが密な映像を提示できる、視差映像の液晶ディスプレイと立体メガネ(左右の視点映像を分離する赤青メガネ等)を用いることで、同目的の達成に向けて発展させている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の実現に向けて、特にガルバノミラーに関する十分な性能検証を行い、ミラー制御を用いた実現の難しさを十分に理解した上で、視差映像ディスプレイというミラーより利用の容易なシステムの存在に気づき、他課題に進展させるほどにまでに至ったため。
|
今後の研究の推進方策 |
ドイツのミュンヘン工科大学でドローンを用いたe-Sportsシステムが研究開発されており、それを広域空中像提示に発展させることを考えている。映像提示を行うにあたって、まずドローンのトラッキングが必要であるが、多色LEDをマーカに見立ててドローンに複数個配置することで、ダイナミックな照明環境下での頑健な姿勢トラッキングを目指す。また、スポーツなのでユーザの手足による遮蔽が容易に起こり得る環境であるが、このような状況下でもロバストにトラッキングを行う手法を考案する。ドローンの高速回転に合わせたプロジェクションマッピング等を行うことにより、広域空中像提示が実現可能と見込まれることから、システム構成が多少違えども、同目的の達成に寄与すると考えられる。
|