マイクロキャリアは接着性細胞の培養が可能であり、単層培養よりも表面積と体積の比率が大きく、その結果として高い細胞密度を実現できるため、これまでウイルスワクチンや組み換えタンパク質の製造に利用されてきた。最近では、間葉系幹細胞の大量培養のための新たなアプローチの一つとして期待されている。また、マイクロキャリア表面における細胞とマイクロキャリアの相互作用は細胞の機能において重要な役割を担っている。しかしながら、培養過程においてマイクロキャリア表面を変えることで、間葉系幹細胞の機能を制御する試みはほとんどなされていない。 そのような背景から、本年度はこれまで開発してきたクリック反応可能なマイクロカプセルの知見を水平展開し、クリック反応可能なマイクロキャリアの開発に取り組んだ。まず、マイクロキャリア表面にクリック反応可能な官能基を導入した新規のマイクロキャリアを開発した。次に開発した新規マイクロキャリアに対して、クリック反応を介した分子導入が可能であることを示した。さらに本マイクロキャリア上で間葉系幹細胞の培養を行い、培養過程で生理活性を有するペプチドをマイクロキャリア表面へクリック反応により導入することで間葉系幹細胞の機能スイッチングに成功した。 今後、本研究により開発されたクリック反応可能なマイクロキャリアを用いることで、様々な生理活性ペプチド導入による培養細胞の機能スイッチングが可能になることが期待される。
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