研究課題/領域番号 |
21J10311
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
早川 亮大 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 超伝導検出器 / X線 / X線検出器 |
研究実績の概要 |
本年度は、産総研と共同で10,000画素を超える超伝導を用いた検出器(TES)の多重化読出に向けて、(1)マイクロ波を用いた超伝導多重化読出回路の設計、評価、(2)100画素X線TESの製作に向けた9画素ガンマ線検出機の評価を行なった。 (1)本年度は、数MHz以上のサンプリングレートでのデータ取得に向けて、超伝導多重化読出回路の高速化に取り組んだ。すでに産総研で開発され、X線用多重化読出回路として実績のある回路をベースとして、読み出しのサンプリングレートをおよそ10倍の約5MHzにするため、回路のパラメータの変更を行なった。約5MHz でのサンプリングを実現するため、読出回路内のクロストークの定量的な見積もりを行った。評価の結果、各画素を読み出すことのできる帯域幅や、多重化読み出し回路に存在する共振器の共振周波数間隔を調整することで、高速応答を実現しつつ、クロストークの影響を最小限にできることを確認した。この知見をもとに、超伝導多重化読出回路素子を設計した。約5MHz でのサンプリングに対応しうるTESとして、40画素の可視・近赤外帯域に特化したものを組み合わせた。評価の結果、40画素の可視・近赤外TESを5MHzのサンプリングレートで多重化読み出しすることに成功した。 (2)100画素のX線TESの設計に向け、検出器の特性や評価方法の確立のため、産総研で開発が進んでいるガンマ線TESのマイクロ波多重化読み出しの基礎評価を行った。ガンマ線TESは、X線や可視・近赤外TESとくらべ時定数が長く、マイクロ波多重化読み出しと相性がよく、マイクロ波多重化読み出しとTESを組み合わせた特性や評価方法の確立に最適である。産総研にて製作された9画素ガンマ線TESをマイクロ波多重化読み出し方式で同時読み出しすることに貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、10,000画素以上のTESの多画素同時読み出しに向けた、マイクロ波高速多重化読み出し回路の設計、試作を行った。クロストークをおさえつつ、高速多重化読み出しを実現するための回路の各パラメータは、低温アンプの帯域幅(4GHz)内に最大で50素子分程度が限界であることがわかった。そこで、本年度は、40画素の多重化読み出し回路の設計、評価を行った。クロストークの評価結果などを踏まえて設計、試作した、高速多重化読み出しの回路パラメータは、概ね設計通りであることが確認できたが、読み出し雑音が当初の予想より大きいことが判明した。5MHzでの多重化読み出し回路単体での動作実証は完了したが、読み出し雑音の原因や削減はまだ完了しておらず、当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
100画素のTESのマイクロ波多重化読み出しの原理実証に向け、まずは40画素の高速多重化読み出し回路の読み出し雑音の原因の洗い出しと、その削減に取り組む。5MHzサンプリングでの、可視・近赤外TESの読み出しにはすでに成功しているため、40画素でのエネルギー分解能の評価を行う。さらに、大型放射光施設での高バックグラウンド環境下での動作実証に向け、ビームラインで標的からの信号を取得できるよう、冷凍機内の検出器ステージ、マイクロ波多重化読み出しに必要な同軸ケーブル、磁気遮蔽シールドの再設計や熱計算を行う。製作した各コンポーネントを実際に冷凍機に組み付け、冷却試験を行い、準備を進める。
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