研究課題/領域番号 |
21J10328
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
柴 亜東 長岡技術科学大学, 大学院工学研究科 博士後期課程 エネルギー・環境工学専攻, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | コラーゲンフィブリル / 配向制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,心臓カテーテルシャフトや血管用カテーテルなどの医療分野で使用されるポリイミド (PI) 膜へラビング処理を施し,その表面で一軸配向性コラーゲン(Col)フィブリルを配列させる技術を確立し,そのColフィブリル配列体を擬似体液 (SBF) へ浸漬して水酸アパタイト(HAp)を析出させる手法を見出した. 走査電子顕微鏡 (SEM) 像および配向角度分布の結果から,ラビン処理したPI膜ではラビング処理方向と平行にColフィブリルが配向し,PI膜ではランダムに配向することを見出した.特に、ラビン処理したPI膜において径が均一で配向率が高いColフィブリルが形成された.偏光赤外分光光度計(偏光FT-IR)スペクトルより,ラビン処理したPI膜において,ラビング処理と平行方向にPIに由来するC=CとC―Nの結合が配向し,垂直方向にC=Oの結合が配向した.次に,ラビング処理と平行方向にCol由来アミドI (C=O) の結合が配向し,垂直方向にアミドII (N―H) の結合が配向した.ラビング処理方向に垂直なPIのC=OとCol側鎖アミノ基のN―H間に水素結合が生じることで,Col分子がラビング方向に配向することがわかった。その後,pHをアルカリ側へ調整すると,Col分子表面に存在するアミノ酸側鎖を帯電させ,Col分子間にアルドール結合やアルジミン結合による架橋が生じ,PI表面に形成されるナノグルーブ空間においてColフィブリル配列構造が形成されると推察している.次いで,Colフィブリル配列体をSBFへ浸漬したところ,Colフィブリルの配列構造は安定であり,Colフィブリル上にHApの微結晶が析出することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では,ポリイミド (PI)膜に対しラビング処理を施し,その表面上でコラーゲン(Col)フィブリルを自己組織化させることで,配向性Colフィブリル配列体を作製する手法を確立した。具体的に,ラビング処理をPI膜へ施すことで,表面官能基及びナノグルーブの配向性を制御できた。そして,ラビング処理したPI膜上では配向性が高く,径が均一なColフィブリル配列体が形成された。そのColフィブリル配列体を擬似体液へ浸漬することで水酸アパタイト(HAp)を析出させ,骨組織に類似したHAp/Col複合ナノ構造体を作製し,骨組織の補填と再生に有用な材料であるという知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
創製した水酸アパタイト(HAp)/コラーゲン(Col)複合ナノ構造体を積層し、成長因子を担持して、成型加工する。ここで、成長因子として骨芽細胞の分化や異所性の石灰化を誘導する生理活性物質「骨形成タンパク質BMP-2」を用いて、効率的に骨芽細胞へ作用させるために、担持する成長因子の分子密度を制御する。合成した膜を積層してHAp/Col複合積層構造体のマイクロチップへと加工する。そして、合成したHAp/Col複合積層構造体について、硬化挙動を考察して補填機能を最適化する。そして,蛍光顕微鏡観察により,複合構造体と骨芽細胞との反応挙動 (細胞毒性,石灰化挙動) を体外で解明し,骨芽細胞の活性を向上させる。さらに、動物の骨欠損部へ本材料を補填して「欠損部の補填」を生体内で達成する。そして、本材料の溶出に伴って成長因子が徐放されて周囲組織の再生・接合を高める原理を確立する。
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