研究課題/領域番号 |
21J10385
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
井上 太貴 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 半自然草原 / チョウ / 標識再捕獲 |
研究実績の概要 |
長野県菅平高原のスキー場草原で6月から9月にかけて5地点でチョウ類3種の標識再捕獲法による調査を行い、ヒメシジミ522個体、ヒョウモンチョウ118個体、ジャノメチョウ193個体を標識した。調査地間の距離は最も近い場所で160 m程度であるが、3種のチョウ全てで標識した個体の調査地間の移動は直接観察されなかった。得られた再捕獲データから、それぞれの発生のピークにおける個体群サイズは、ヒメシジミでは7月12日に719個体、ヒョウモンチョウでは8月12日に296個体、ジャノメチョウでは8月6日に312個体と推定された。発生個体数と草原の履歴を考えることで、各種の草原履歴の依存性の解析が期待される。3種とも先行研究と比較して再捕獲率が低く、標識済み個体が再捕獲されないため個体群サイズが推定できない時があった。 草原間の過去の移動を明らかにするためのDNAの解析用に、3種のチョウのサンプルを採取した。菅平の草原5地点から、ヒメシジミ幼虫69個体、成虫102個体、ジャノメチョウ成虫104個体、ヒョウモンチョウ成虫97個体から後翅の一部を採取し、その後放虫した。また、外群として菅平以外の地域からヒメシジミ18個体、ジャノメチョウ22個体を採取した。採取されたサンプルは無水エタノール中に保存し、DNA解析の準備に取りかかっている。今後の解析によって、歴史的な遺伝子流動を解明し、現在・過去における蝶の草原間の動態を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の標識再捕獲においては、順調に完了した。標識再捕獲率の低さから、調査間隔を短くすることや、標識数を増やすことなど、今年度の方針も得られた。 DNA解析については、実験所の使用予定だった機器の故障や、その代替方法・外注の模索が終わっておらず、大きく遅れている。サンプルの採取は概ね終わっており、順調である。外群として菅平以外の地域から20個体程度のサンプルの採集をしているが、ヒョウモンチョウについては他の生息地を探せなかったため、採集できていないため、今年度の採集が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究これまで得られたデータの解析と、その発表が中心になる予定だ。現在進捗の遅れているDNAの抽出・解析は特に優先され、使用予定の機器の故障もあるため、代替手段か外注先の選定から進める。昨年と同様に標識再捕獲とDNAサンプルの採集をし、データの量を増やし、6~9月に花の数や食草の量など環境要因データも集める。 成果の発表については、投稿先に要旨の提出を進めており、その結果に合わせて投稿を進めていく予定である。
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