研究課題/領域番号 |
21J10430
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
塩津 勇作 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | CMOS / SRAM / 低消費電力 / パワーゲーティング / エネルギー最小点動作 / 動作時電力 / 待機時電力 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,所属研究室で提案した3モードSRAM(3M-SRAM)を用いて,エネルギー最小点となる駆動電圧(VEmin)を用いた動作時電力の削減と,超低電圧リテンション(ULVR)を用いたパワーゲーティング(PG)による待機時電力の削減を実現することを目的とする.3M-SRAMはシュミットトリガ(ST)型インバータをベースとしたデュアルモードインバータで構成され,通常電圧下(VDD)のSRAM動作時では6Tセルと同等の高性能動作を実現できる(NIモード).駆動電圧を超低電圧VUL(<VEmin)に下げると,STモードに移行し安定にデータを保持し(ULVR),実質的なPGを実行できる.また,このSTモードを用いることでVEmin動作も可能になる. 本年度は,3M-SRAMに用いるメモリセルの最適設計およびこれを用いた8KBの3M-SRAMマクロの設計およびその性能評価・検証を中心に研究を進めた.デバイスのグローバルおよびローカルばらつき,動作温度の影響を考慮し,ワーストケースとなるULVリテンションのノイズマージンを十分確保し,リーク電力を最小に抑えるように3M-SRAMセルの最適設計方法を開発した.最適設計したセルの故障率を,ローカルばらつきを考慮したモンテカルロシミュレーションにより評価し,十分な歩留まりを達成できることを示した. 次いで,この最適設計したセルを用いて8KBの3M-SRAMマクロの開発を行い,寄生抵抗・容量を考慮した高速SPICEによる大規模シミュレーションから評価を行った.開発したマクロは,0.2VのULVRを用いた実質的なPGにより待機時電力を~90%削減できた.また,PGの指標となるBreak-even time (BET)を数μsと極めて短く,細粒度のPGを実現できることを明らかにした.そして,0.4VのVEmin動作によって動作時電力を通常動作時(1.2V)と比べて1/100にまで削減できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,3M-SRAMの8KBマクロを計画通り設計できた.また,マクロの評価についても計画通り,ULVRを用いた実質的なPGによる待機時電力削減効果およびBET,VEmin動作による動作時電力削減効果を明らかにすることができた.結果は予想以上のものであった.また,本結果をベースに3M-SRAM を用いたProcessing-in-memory(PIM)型の新型2値化ニューラルネットワーク(BNN)アクセラレータの設計に着手できた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、3M-SRAMマクロを用いたProcessing-in-memory(PIM)型の新型2値化ニューラルネットワーク(BNN)アクセラレータのマクロ設計とその性能評価を行う。重みデータを3M-SRAMに記憶させることで、ULVリテンションにより待機時電力を削減し,またVEmin動作を用いた並列化演算数によって,エネルギー効率(TOPS/W)を最大限に向上できる設計方法を確立する.また、設計した3M-SRAMマクロと新型BNNのチップ試作を行い、機能・性能実証を行う。
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