研究課題/領域番号 |
21J10564
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 健祐 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | シナプス可塑性 / 記憶 / 情報量最大化 / 徐波 |
研究実績の概要 |
学習における睡眠の意義を明らかにするために、slow waveにより誘導されるシナプス可塑性に関して理論モデルを用いて研究をおこなった。まず神経細胞間の情報伝達を最大化するようなシナプス可塑性学習則を考え、そのようなシナプス可塑性はベースラインの発火率(平均発火率)の影響を受けることを見出した。平均発火率が高い時はいわばノイズレベルが高くシグナルノイズ比が低くなるため、最適なシナプス変化が減少方向にシフトしていた。これはslow waveにおいて発火率が高いup stateと発火率が低いdown stateを比較すると、up stateにおいてシナプス可塑性が減少方向にシフトしていることと合致していた。次にslow waveを生成するネットワークモデルを考えると、空間スケールに応じて平均発火率が変化することが示唆された。具体的には、抑制性神経細胞を介したネットワークの性質により、空間的にグローバルなup stateはローカルなup stateと比べて平均発火率が低くなっていた。よって、空間スケールが異なるslow waveにおいて、情報伝達を最大化するシナプス可塑性を計算すると、グローバルなslow waveがシナプス増強、ローカルなslow waveがシナプス抑圧に寄与する傾向があることがわかった。これらより、情報伝達の観点からslow waveのup state, down stateや空間スケールが学習に与える影響に関する示唆を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報伝達最大化シナプス可塑性モデルを用いて、slow wave中のシナプス可塑性に関する解析をおこない、当初の計画通りup state, down stateの違いに着目して解析を施行した。 計画通りおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
記憶定着とslow waveの空間スケールの関係について、シナプス可塑性学習則を用いて引き続きアプローチする。特に、先行研究においてグローバル、ローカルなslow waveがそれぞれ記憶の定着、忘却に寄与する可能性が提唱されており、そこに注目して理論モデルによるアプローチをおこなう。
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