研究課題/領域番号 |
21J10587
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
野原 智裕 山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 表面改質 / 粒子共存制御ラジカル重合法 / フィラー充填膜 |
研究実績の概要 |
フィラーのプロトン伝導度の更なる向上を目指し、セルロースナノ結晶(CNC)表面上へ弱酸性高分子(ポリビニルホスホン酸(PVPA))を均質に被覆することで達成できると着想し、CNCのリン酸エステル化を実施した。リン酸エステル化CNC(CNC-P)は、CNCを尿素触媒存在下、リン酸水溶液中で熱攪拌するだけの簡便な手法で得られる。得られたCNC-Pを真空乾燥で表面水を完全に除去し、その粒子表面上にPVPAを粒子共存制御ラジカル重合法(RAFT PwP)にて被覆した。未処理のCNCのプロトン伝導度は10^(-6) S/cm桁と極めて小さかった一方で、CNC-Pは10^(-2) S/cm桁であり、リン酸エステル化処理をするだけで4桁のプロトン伝導度が向上することを見出した。これは、CNC表面のOH基数が大幅に増加し、プロトンがそのOH基を介して表面伝導したからであると考えられる。得られたCNC-PにPVPAを被覆したところ、10^(-1) S/cm桁のプロトン伝導度であり、CNC-Pと比較してプロトン伝導度が向上することを見出した。 また現在、作製した機能化フィラーを吸水率の異なるバインダー樹脂(ポリメタクリル酸メチル(PMMA):2.62%, ポリカーボネート(PC):0.54%, PS:0.06%)に充填した電解質膜を製膜し、吸水率とプロトン伝導性能や機械的強度等の関係性解明を実施・検討中である。 また本年度の研究報告として、ACS Applied Materials & Interfacesに、RAFT PwPを援用し、CNC表面へPVPAとPSとのブロック共重合体を被覆した、機能化粒子の作製及び、PCバインダー中へ充填した、新規フィラー充填膜に関する論文を報告し、Supplementally cover artへ選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、セルロースナノ結晶表面のリン酸エステル化し、その表面に弱酸のプロトン伝導性高分子を被覆することに成功した。本年度で作製した機能化粒子を用いることで、既存電解質膜に匹敵し得るプロトン伝導度を有する電解質膜の作製が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
作製した機能化粒子を充填したフィラー充填膜を作製し、単セルを構築した発電特性の評価を行う。また、吸水率や酸化還元耐性の指標から選んだ種々のバインダーを用いたフィラー充填膜を作製し、それらのプロトン伝導性評価・機械的強度等の評価を実施する予定である。
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