研究課題/領域番号 |
21J10600
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅野 寛志 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 蛍光 / 蛍光寿命 / イメージングフローサイトメトリー / がん細胞 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
細胞集団に見られる不均一性の解析は生命科学研究や医療研究において重要なテーマであり、がんをはじめとする不均一な細胞群を単一細胞レベルで大規模に画像化し、定量的かつ統計的に解析する手法の確立が求められている。2021年度に開始した本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行によって当初の研究計画からの変更を余儀なくされたが、逆にこの状況を活かし、細胞集団の画像解析の実証実験として、COVID-19患者血液中の血液細胞群(血小板および血小板の凝集塊)の不均一性の解析を行った。具体的には、東京大学医学部附属病院に入院したCOVID-19患者110名の血液を採取し、開発した特殊な高速流体顕微鏡を用いて血液中の血小板および血小板凝集塊を1サンプルあたり25,000枚撮影後、取得した画像群から細胞の大きさなどの形態的特徴量を抽出し、様々な統計解析を行った。その結果、COVID-19患者の約9割から過剰な血小板凝集塊を発見し、それがCOVID-19の臨床病態(血管内皮障害や呼吸状態など)と強く関連していることを明らかにした。本研究で得られた知見は、COVID-19に関連した血栓症の病態解明や重症化リスクの予測に資すると期待される。また本研究はNature Communications誌に掲載され、各種メディアにも大きく取り上げられた。一方、蛍光寿命を用いたイメージングフローサイトメーターの開発も並行して行い、2次元蛍光寿命イメージングフローサイトメーターを完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19患者血液中の血液細胞群の不均一性解析を行ったことにより、蛍光寿命イメージングフローサイトメーター開発の進捗については、当初の研究計画よりも遅れている。しかしながら、直近では2次元蛍光寿命イメージングフローサイトメーターの開発が完了し、既に装置の活用段階に入っていること、またCOVID-19の研究により一定の成果をあげたことなどを考慮すると、全体的な研究としては順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、2次元蛍光寿命イメージングフローサイトメーターを開発後、それを3次元イメージングへと拡張する予定であった。しかし、COVID-19により研究計画の変更が生じたことや、2次元イメージングフローサイトメーターでも有用性が十分高いことを考慮し、今後は装置の拡張よりも現行の装置を活用した応用研究(生命科学研究や医療研究など)を優先して行うつもりである。
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