研究計画立案当時は、本研究はGraal/Truffleを用いて遂行する予定だった。しかし、COVID-19の影響により研究協力者との対面でのやりとりが困難になり、PyPy/RPythonを用いた研究へ変更した。一方、研究の根幹となる「プログラミング言語の生産技術」に関するテーマは一環して行ってきた。主な成果として、インタプリタ定義が実行時コンパイラの振舞いを制御・拡張することができる新たな事実を発見した点が挙げられる。これまで、インタプリタは言語の振る舞いを記述するものであると思われていたが、本研究はその固定観念を打破するだけでなく、実行時コンパイラの制御が大きくコンパイラを改変せずとも可能であるという事実を導き出した。この発見により、プログラミング言語の実現に多大な実装コストをかけずとも、インタプリタを介してユーザーが望んだコンパイラの振舞いを実現することができるといった展望が拓かれた。具体的には、RPython言語で書かれたインタプリタにヒント命令を挿入することによってRPythonのメタ実行履歴型実行時コンパイラの挙動を操っている。この技術はインタプリタ・コンパイラの双方を大幅に改変せずとも実現可能なことが、RPythonによって生成されたSmalltalkのサブセットであるPySOMを用いて実証された。この取り組みを軸に、RPythonによる高速なPython処理系であるPyPyへ本研究を導入することによってより現実的なプログラムにおいても本研究提案の有効性を示していくことが今後の課題である。
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