研究課題/領域番号 |
21J10710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山川 智嗣 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 地球磁気圏 / 環電流 / ULF波動 |
研究実績の概要 |
地球近傍の宇宙空間(内部磁気圏)では、地球の双極子磁場が強く、様々なエネルギー帯の荷電粒子が捕捉されている。静穏時にはあまり変動は見られないが、宇宙嵐時には西向きの環電流が発達し、地球の固有磁場が大きく変化する。このとき、環電流によってULF波動というmHz帯の周波数を持つ電磁波動が励起されると考えられているが、どこでどのように励起されるか、その詳細なメカニズムについては解明されていない。本研究の目的は、内部磁気圏における環電流イオンによるULF波動の励起機構・空間分布を明らかにすることである。 令和3年度の研究では、主に交付申請書にある課題1「単純化した粒子注入下での環電流起源のULF波動の励起機構の解明」を行った。課題1では、内部磁気圏において電磁場と粒子の時間発展を自己無撞着に解く環電流モデル(GEMSIS-RC)と全球でポテンシャルを解く電離圏モデル(GEMSIS-POT)とを結合したモデルを用いた。結合されたモデルにおいて、夜側に粒子が注入された状態を初期条件として仮定し、数値計算を行った結果、環電流イオンにより2種類のULF波動が励起されることが分かった。また、このモデル結合により、ULF波動の記述性能を高め、結合しない場合と比べてより高振幅のULF波動を再現することに成功した。様々な初期設定で数値計算を行った結果、それぞれの種類のULF波動の特性(振幅・周波数・端数)が初期に与える電場や背景密度に対して大きく依存することが明らかになった。以上の研究成果について論文にまとめ、国際学会誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、GEMSIS-RC+GEMSIS-POTを用いて、単純化された粒子注入下での環電流によるULF波動の励起についての解析を、当初の予定通りに行うことができた。また、背景密度を与える低温粒子の運動を解くモジュールも開発済みであり、来年度以降も継続的にモデルを活用していく予定である。交付申請書にある課題2については今年度はなかなか取り組むことはできなかったが、本年度では来年度以降利用する衛星観測データの基本的な解析手法を習得することができ、研究計画全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った研究をさらに発展させて、観測との比較による環電流起源のULF波動の励起機構の解明を行う予定である。最初にモデルの中で、背景密度を与える低温粒子を動かすことで、低温粒子の運動がULF波動に与える影響を明らかにする。 次に、あらせ衛星やVan Allen Probesを用いて、実際に環電流によって励起されたULF波動のイベントをいくつかピックアップし、観測されたULF波動の特性(周波数・振幅・発生領域)を整理する。また観測されたULF波動をモデルで再現できるかどうかについても検証する。もし再現できなければ、シミュレーションの設定を見直し、どのように設定すれば観測されるULF波動を再現できるか検討する。
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